あ、たま

 彼が僕の頭を見て言う。

「君は禿げているな」

 僕は彼の頭を見て言う。

「君は禿げていないね」

「そうなんだよ」

 とたんに、彼は不安そうな表情になり、

「何とか禿げることはできないだろうか」

「この薬を使うといいよ」

 僕は懐から一本の薬瓶を取り出して、彼に渡す。

「これは?」

「禿げる薬さ」

 すぐに、彼はそれを頭に塗り込む。

 ふさふさ。

「やったぁ!」

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