物語の日常が消えた日

 ヒロインが話しかけると周りのみんなは笑顔でその話を聞く。男子たちはヒロインを囲み、女子たちは可愛いヒロインをそんな男子たちハイエナから守るように積極的に話しかける。それが物語の中の普通だ。

「華、おはよー。」

「おはよう、蘭。そういえば昨日告白してきた男子、大丈夫だった?」

「それがさ〜....」

蘭は誰とでも仲が良い。常に笑顔で可愛くて誠実な優しい子だから誰からも好かれる。そんないかにも人生勝ち組の蘭は幼稚園の頃からの仲だからとなにかと平凡で感情が希薄な私と仲良くしてくれている。....いい子だと思う。だから私達のクラスは蘭を中心に回り、誰もその舞台を壊そうとはしない。それが私達の日常だった。

 見た目が平凡な私でも蘭の隣に立つためにいくらかは毎朝努力している。教師にバレない程度にメイクを施し、後ろ姿が平凡にならないように髪の毛を巻く。

「....熱っ!」

失敗した。ボーッとしていてコテが首筋に当たってしまった....。朝から最悪だ。そんなことを考えながら登校していると私は今日は蘭と会っていないと思った。

「まあ、多少寝坊はするか....。」

ガラガラガラ。教室の扉を開けるとそこにはいつもより落ち着かない様子のクラスメートたちがいた。近くにいた女子、中田 美浦なかだ みほちゃんに尋ねると信じられないとでも言うような表情をされる。なにか教えてもらうことはできなさそうだと思い教室の中心を覗き込むとそこにいたのはいつもの自信に満ち溢れた顔をした彼女からは想像もつかないほど暗くてボサボサな髪型の蘭だった。

 

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物語のヒロインが消えてから T.Y @yu_514ki

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