勇気を出して告白した学校のマドンナは暗殺者でした。それでも好きです!

くさもち

短編

「行ってきまーす!」

遠くからお母さんの声が聞こえた。

そして、いつもの駅に向かう。

僕は、橋田柊。高校生になってから少し日は経ってるからもう迷うことはないけど、最初は駅に行くのにも一苦労していた。

中学校は駅の方向とは逆だったのであまり行くことがなく道を覚えていなかった。


そんな僕でも優しくしてくれた人がいる。

「清華先輩…いた!」

駅のホームで1人、周囲の人から注目を浴びている人がいる。

同じ学校で1つ年上の清華先輩だ。

清華先輩は頭が良くて、容姿端麗、運動神経もいいことから学校のマドンナとして有名だ。

サッカー部のキャプテンや柔道部の主将などから告白されても「興味無い」で一蹴するのでも有名。


僕は迷っていたところを華つか先輩に教えて貰ったくらいで今はこうして遠くから見つけることくらいしか出来ない。


「おはよう!柊!」

「おはよう和真」

駅を降りるとだいたいいつもこいつ田中和真が待っている。

「待たずに学校に行っても良かったのに」

「1人で登校するのはつまんねーだろ?だからお前を待ってるの」

「あ、先輩どっか行っちゃった…」

「お前、本当清華先輩好きだよな」

「そ、そういう訳じゃない!もう行こう!遅刻するよ!」

「はいはい」

少し駅で時間をかけていたせいか、結構ギリギリだった。


「じゃあな柊!バイト頑張れよー」

「和真も部活頑張ってね」

みんなが部活に向かう中、僕は学校が終わった後は1人で帰っている。

教室を出た瞬間、

「清華会長、この部活動予算の話なんですが…」

「その部活動予算は要望にあった通り、少し増やしてみましょう。増額に関しては先生と打ち合わせをします。」

そう言いながらふと、清華先輩と目があった。

僕は咄嗟に目を逸らしてしまい急いで階段を降りた。


「やっちゃった〜せっかく目があったのに。絶対嫌な人だと思われてるよ」

電車に揺られてる間ずっとそんなことを考えていた。

僕は家の最寄り駅より2駅先で降りる。

降りてから5分くらい歩くと僕のバイト先である喫茶店に着く。


「やあ、柊君、今日もよろしくね。」

「はい。マスター。」

マスターは優しい人だ。僕のことを良く理解してくれている。僕の父さんの親友だったらしい。そのツテで入れたのもあるのかな?


「昨日はお父さんの七回忌だったみたいだね。行けなくて本当に申し訳ない。」

「いえいえ、気持ちだけでも嬉しいです。マスターの娘さん良くなりましたか?」

「1日寝たら熱も下がったみたいでもう1人で大丈夫って言うから私も店を開けることができたよ」

そう。僕のお父さんは7年前、帰り道交通事故にあって帰らぬ人になった。

母さんもそれから働くようになった。

僕も頑張って勉強して今の学校に入ったけどそれでも母さんの負担を減らすため今こうして働いている。


「いつもありがとうね」

「こちらこそまたいらしてくださいね」

ここの常連の人は優しい人ばかりで僕もすごくやりがいを持ってやれている。


「お疲れ様ですマスター」

「お疲れ様。花蓮さんにもよろしく伝えておいてくれ」

「はい!」

スマホをつけるともう10時。

「今日は星が見える」

星空を眺めながら歩いていたら

「いた。す、すみません」

肩がぶつかってしまった。僕はすぐに謝り去ろうとしたが

「おい待てや。それだけか?」

見ると、怖そうなお兄さんだった。

「金」

「え?」

「だから金!兄貴がぶつかったんだからその慰謝料だよ!」

「えっと…」

僕はどうしたらいいか迷っていると怖いお兄さん達に路地裏に連れてかれた。


「早く金出せよ!」

「嫌です。か、帰らせて欲しいです…」

「は?無理に決まってるだろ」

もう大人しく渡すしかないのかと怯えていると


「ぐはぁ!」

「おい!どうしぐはぁ!」

「な、なんだ!?」

「あなた達何をしているんですか…?」

「お、俺たちはただ少年を保護していただけで…」

「そうですか。なら私が彼を送り届けるので…」

その後その全身黒ずくめで肩に灰色の羽がついたフードを被った人はその人の耳元で何かを言った。

怖そうなお兄さん達はすぐにどっかに行ってしまった。


「ふぅ」

フードをとった後の姿に僕は驚いた。

「大丈夫ですか?柊君」

「清華先輩…?」

ニコッと微笑むのは僕の好きな人である清華先輩だった。

「柊君と話すのは久しぶりだね」

「そ、そうですね」

「今から帰るところだから一緒に帰らない?」

「は、はい!」

それから僕は先輩と一緒に帰ることになったのだけど緊張して何を話せばいいのか分からない。


「柊君はなんでこんな時間まで外に出てたの?」

「バイトをしてて、それでこの時間まで…」

「そうなんだ」

「清華先輩こそどうしてこの時間まで?」

「私もしてたの」

「お仕事ですか?」

「うん」

清華先輩も働いてるとは思わなかった。生徒会長の仕事もあって勉強もしないといけないのに。

器用すぎる。

「ここ、僕の家です」

「そっか。じゃあお別れかな。もうあんな人達に絡まれたらダメだよ?」

と頭を撫でられる。

「はい///」

清華先輩は優しい。僕とじゃ釣り合わないかもしれない。

特に接点もないのに名前を覚えてくれている。

一か八かだけど告白タイミングは今しかない!


「うん?どうしたの柊君?どこか痛い?もしかしてあの人たちになんかされた?」

「先輩」

「好きです」

「え?えっと…それは本当に?」

「はい」

戸惑っている様子からどう断ろうか考えているのだろう。

やっぱり気まずいことをしてしまった。

「やっぱりむ…」

「いいよ、付き合おう。」

僕は思考が一瞬停止した。それから今までにない嬉しさが込み上げてくる。

「え?ほ、本当ですか!?」


「でも私…なんだ」

「え、暗殺者?」

暗殺者ってあの?依頼が来てそのターゲットを〇す人?それって…

「かっこいい…」

「え?」

「かっこいいじゃないですか!だって華麗にターゲットをなぎ倒せるってことですよね?」

「う、うんまぁ…」

「やっぱりすごいな〜清華先輩は」

そう言って先輩の顔を見ると少し戸惑ったような表情をしている。

少し熱くなりすぎたかな?

「でも柊君は怖くないの?私、学校ではクールでいてクラスメイトにも遠ざけられてるし、増してや人〇してるんだよ?」

「けど、だいたいターゲットって何か悪いことしてる人ばかりじゃないんですか?」

どっかの漫画かアニメで昔見た事があるけど現実は違うのかな…?

「いやそれはそうなんだけど…」

「じゃあ問題ないですよ。それも先輩のかっこいい所でいいじゃないですか」

「そっか。うん、そうだよね。ありがとう初めてだよこんなに褒めて来る人」

「そうですか?」

「うん。そこも含めて柊君が好きなんだけどね。優しいところとか、下心をむき出しにしてくる人とは違って誠実なところも」

やばい。先輩がドキドキさせてくる。

「じゃあ、これから改めてよろしくね私の彼氏君?」

「うん!」

その日、清華先輩の笑顔は満月に照らされ夜でも良く見え、その笑顔は脳裏に焼き付いた。


翌日

目を開けるとぼんやりと先輩の顔が見える。

やばい。嬉しすぎて幻覚が見えてしまっているかもしれない。

「ふふ、おはよう」

幻聴までする。今日休んだ方がいいかな…

いやこれは

「え!?清華先輩!?」

まさかの現実だった。

「どうしたの?急に慌てて」

「いやな、何で清華先輩が僕にいるんですか?」

「それは君を守るため…かな?」

か、かっこいい…ってそうじゃなくて

「どうやって入ってきたんですか?母さんにバレたら何て説明すればいいか」

「もうご挨拶させてもらったよ」

「え?」

早くないか?最低半年付き合ったくらいでするものだと思ってたんだけど…

「もしかして僕、寝相悪くなかったですか?」

「可愛かったよ。ヨダレも出てたから拭いておいてあげたし」

「え?マジですか?」

「マジ」

やっちゃったー。終わった。こんなだらしないやつが彼氏とか幻滅されてもおかしくない。

僕は頭を抱え込んでいると

下の階から

「2人ともー!ご飯できたよー!」

「はい!今行きます!ほら柊君起きて行こう?」

「はい」

僕は目を擦りながら先輩に連れられて下の階にいく。

「あら、もう手なんて繋いじゃってるの?」

「え?あ」

今日何回目のえ?か分からないが今僕清華先輩と手を繋いじゃってる。

目を擦ってたせいで自然と気がつかなかった。

「ご、ごめんなさい!」

「ふふ、謝ることじゃないよ」

清華先輩ってこんなに優しい人だったっけ?


「味噌汁いつもと違って美味しい」

「あら気づいた?味噌汁は玲香ちゃんが作ってくれたのよ」

玲香ちゃん…?もう名前呼びなんですかお母様?

「すごい美味しいです清華先輩。」

「う、うんありがとう。」

「うふふ、たまには玲香ちゃんにも手伝ってもらおうかしら」


「じゃあ行ってくるね!」

「玲香ちゃん、こんな息子をよろしくお願いします」

「はい。任せてくださいお母様。命にかえてもお守りさせてもらいます」

なんでこんなに仲良くなってるんだ…?

まぁ母さんと仲良くなってくれるのは嬉しいよ?

けど…

「僕も仲良くなりたいのに…」

「うん?どうしたの柊君」

つい、声が漏れちゃった。

「いや、何でもないです…」

「そう。なら早く行きましょう」

と、手を差し伸べられる。

「これって…」

「手は繋がないの?カップルは毎朝登校する時に繋いでいくって聞いたけど。お姫様抱っこの方が良かったりする?」

「そ、それは恥ずかしいですって!」

「ふふ、嘘だよ。」

とニヤニヤしながら言ってくる。

「けど、お姫様抱っこしてみたいのは本当だからね」

「!?」

お姫様抱っこって彼氏がするのが普通なんじゃない?


でも僕の方が清華先輩より10センチ弱低いし筋肉もあんまりないのできつい。

身長差もあり電車に乗ってる時も

「あの人たち姉弟かな?」

「多分そうなんじゃない?」

こんな感じで勘違いされる。

「大丈夫。君は私の彼氏だから」

清華先輩やっぱり優しすぎる。


学校の最寄り駅で降りてしばらく歩いていると当然学校の制服を着た人をたくさん見かける。

「あれ、清華先輩じゃない?」

「隣にいる人は弟?」

「でも弟がいるなんて聞いたことないぞ」

「それじゃあ彼氏ってことか!?」

全部聞こえるくらい周りの人はザワザワしていた。


すると、

「清華さん、おはよう!」

金髪のチャラそうな先輩が清華先輩に話しかけてきた。

「おはようございます」

「ところでその隣にいる人は誰?」

若干睨まれた僕は萎縮してしまう。昨日もあんなことがあったから年上の人をより怖く感じてしまっているのかもしれない。

「あなたには関係ありません、では」

「ちょっ!」

「早く行きましょう」

「う、うん」

「そんな冴えないやつより俺の方が…!」

「柊君は冴えない人ではありません。あなたの何千倍も魅力のある人です。人を馬鹿にするから嫌われるんですよ」

急に清華先輩の周りに黒いオーラっぽいのが見えた。冷徹な眼差しでその人を見たあと、

「そういえば柊君。neinを交換するのを忘れてました」

「あ、そういえば」

「これでよしっと。困ったらいつでも連絡してください。授業中でも飛んできますので!」

「それはダメだよ!」

清華先輩と別れて教室に入るとみんなザワザワしている。


「おい柊!」

「和真どうしたんだ?」

「どうしたじゃねーよ!お前清華先輩と付き合ってるのか?」

「うん。昨日付き合うことになった」

「「「えーーーー!」」」

クラスのみんな揃って驚く。

「おい嘘だろ…?」

「あの冷徹に告白をスルーする清華先輩が…?」

クラスの男子は暗い顔している。

「俺の先輩もお前に嫉妬してるぞ」

「え、本当に?」

「なんかあったら俺に言えよ。柄の悪い先輩もうち結構多いから」

「わ、分かった」


お昼になると、

「柊君」

「え?清華先輩?」

またクラスがザワつく。

「ちょ、ちょっと先輩こっち来て」

「急にどうしたの?」

「いや、先輩が来るとクラスが異常にザワつくので」

「そうなんだ。それで私、今日お弁当作ってあるんだ」

「マジですか!?」

「マジ。一緒に食べよう?」

「はい!」

いつもは使わない階段を上っていく。

「先輩屋上は使えないですよ?」

「生徒会長の特権で屋上の鍵を持っているので大丈夫」

生徒会長ってそんなこともできるの?

「はい、あーん」

「あ、あーん」

「どう、美味しい?」

夢みたいだ。先輩にあーんしてもらっちゃってる。

「めちゃくちゃ美味しいです」

「良かった」

自分で食べようとするけど全部あーんしてもらっている。

「授業中、私のこと眺めてたよね?」

「え?」

確かに授業中反対の校舎にたまたま授業を受けている清華先輩が見えたので授業そっちのけで眺めていたけど

「バレてたんですか…?」

「暗殺者を舐めない方がいいよ」

「は、はい…」

気配を察知できるとかかな?


7限目のチャイムが鳴り、そそくさと帰る準備をしていた時、neinの通知音も鳴った。

《少し、生徒会で提出するものがあるから先帰ってて欲しい。付き合って初日なのに一緒に帰えれなくてすまない》

口調が丁寧なところから学校でも前から見る清華先輩の雰囲気を感じる。僕といる時とのギャップがすごい。


それなら先帰ろうと和真に別れを告げ教室を出た時

「おい、お前」

「はい?」

朝見た金髪の人が体がごつくて身長の高い人達を何人か連れて僕に話しかけてきた。

これ朝に和真が言ってたやつ?


「ちょっと話したいことあるから校舎裏来いよ」

「おい柊…」

和真と数人の友達が心配そうに僕を見る。

「大丈夫だよ。話すだけみたいだし」


ついていくと、案の定校舎裏に着いた瞬間囲まれた。

「馬鹿だな〜お前。俺たちが真剣に話し合いすると思ったのか?」

やっぱりそんな気がした。

この人たち、悪い人の部類に入るのかな?


「なんでちびなお前如きが清華と付き合ってるか分かんねぇ。こんなかっこよくて高身長の俺がいるのに」

「そうだそうだ!」

他の人も金髪の人の味方をしている。


けど、そもそも何で先輩はOKしてくれたんだろう?

「もしかしたら僕が好きなだけ…?」

「やっと気づいたか。清華がお前みたいなやつ好きになるわけないだろ。」

とその人たちは笑い始めた。


「それでもう調子乗らないように俺らがちゃんとしつけなくちゃ…な?」

肩を掴まれたけど僕はどうすることも出来ずただ怖かった。

「じゃあ俺から一発目!」

痛いのを覚悟した瞬間、

「ぐはぁ!」


金髪の人は急に倒れた。

何が起きたか分からなかった。

「お待たせ。遅くなっちゃったね」

黒いフードを被った人が僕の隣に現れた。

その人の肩には灰色の羽がついていた。


「こいつ誰だ!?」

「誰か分からないけどこいつも懲らしめた方がいいんじゃないか?」

「みんなで相手すれば勝てる!」

と一斉にフードの人に殴りかかってきていたが、

「…」「…」

何が起きたかも分からず、その人たちも倒れてしまった。


「みねうちだから大丈夫だよ」

とフードを外したのは

「清華先輩…」

だった。

「ごめん。探すのに時間がかかっちゃった。クラスの人に聞いたら校舎裏って言われて…」


「先輩は僕のこと好きなんですか?」

そんなことを急に僕が聞いたため、清華先輩は黙ってしまった。

「何でそんなことを聞くの?」

「そこにいる人達と話してたら僕が好きなだけで清華先輩は仕方なく付き合ってくれているだけなのかな…って」

あれ…?何で涙が出てきちゃうんだろう?


すると、清華先輩が抱きしめてきて

「好きだよ。どうしようもないくらい大好き。昔からずっと気になってたけど暗殺者だからきっと言っても怖がられるだけだと思ったから」

「そんなこと…」

「分かってるよ。この前君がかっこいいって言ってくれて、嬉しかった。それに好きになってもいいんだって思えた。だから自分をそんなに責めないで?君は私のかっこよくて、可愛い彼氏君なんだよ?」

と頭を撫でられる。

「うん…」

「じゃあ泣き止んだみたいだし、この人たちは…見つけた人に任せて帰りどこか寄っていこうか?」

「うん!」

僕は清華先輩と手を繋いで帰路につく。



???「あの「氷の女王」にベタ惚れされているやつがいるとは。クク…面白い」




《読んでいただきありがとうございました!この作品は後に連載化しようと思っていますのでハートや☆をたくさんもらえたらやる気に繋がるのでお願いします!》




























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