二代目腹黒(イト・ティナ視点)
「な、なんでファルマがっ?!」
ファルマと追いかけっこをしていたところ、「わ、わたしもかけっこしたいです」と言ってユイも合流して、三人で緩くかけっこをしていたのに。
「ふふ、ユイ確保ですわぁ~」
目の前でのんびりとそう言いながらユイに抱き着いているファルマに私の理解が追いつきません。
「か、確保って?ファルマは追いかけられる側じゃないですかっ?」
視線を少しずらしていたファルマが私を見て悲しそうに目を伏せてしょんぼり。何表情作ってるんですかっ。
「あら~、ティナはわたくしと握手したのを忘れましたのぉ?貴女からこの手を取ってくださいましたのにぃ」
「……え、あれでですか!?」
思い出させるのは、ファルマが私に差し出してくれた手を私が取ったこと。
確かにファルマの手は取りましたけど!あれで!?
唖然とする私に構わずファルマはうふふと微笑みます。
「当然ですわぁ。追いかける側になる基準は接触ですものぉ」
「あぅあぅあ…」
ファルマに抱き着かれて目を回しているユイ。
……師匠役の私がいつまでも動揺していては面目丸つぶれですね。
「…ファルマらしい戦法ということにしておきましょう。ほらユイ、起きてください」
「ありがとうございますわぁ」
「うううぅぅ…ティナちゃん…?」
ファルマの腕の中でくらくらと頭を揺らしながら起き上がったユイの頭をぽんぽん。
「おはようございますユイ。同じ追いかける側として頑張りましょう」
「へっ、わわわわわたしティナちゃんに捕まっちゃいましたかっ?」
「私は捕まえていませんよ」
「わたくしですわぁ、ユイ~」
「あれ、ファルマちゃんもティナちゃん側だったんです、か?」
「そうなんですのぉ~。黙っていて申し訳ございませんでしたわぁ」
そうだったんですね~、と大して気にした様子のないユイと話すファルマを見ながら首を傾げます。
ファルマは私やユイのように体力がないわけでも運動神経が悪いわけでもないのですから、かけっこの提案は助かりましたが……追いかけっこをするつもりだったのならば、もっと他に手もあったのでは?
私を振り返ったファルマが、ぼんやりとした薄水色の瞳を細め、白い指先を頬に添えておっとりと微笑みました。
「無駄に走り回りたくありませんものぉ」
なるほど、ファルマも月夜ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます