魔導具
「追いかけっこを始めます!逃げる班は三十秒の間に校庭に散らばること!それではっ、開始っ!!」
サヤが全体に合図をとると、じゃんけんで勝って逃げる班になった子たちが一斉に散らばっていく。その場に留まっているのが追いかける班の子たちか。
追いかける班の子は三人。リユラと、ティナと、ノア。楽しそうに声を合わせて三十秒を数えている。
監視役のボクたちは校庭から出た校舎の屋根から見守っている。指示を出し終えたサヤが身体強化魔法を使って屋根まで上ってくる。ボクの隣に並んで校庭を見下ろすサヤ。その視線は険しい。やがてうるんだ目を向けられる。
「ちょっと遠いってぇ」
「遠視魔法使えばいいんじゃない?サヤ視力悪かったっけ」
「視力いいけど流石に遠いのっ!!あと私が身体強化魔法と炎属性魔法しかまともにできないの知ってるでしょぉおおおっ!」
「あそっか、じゃあボクの魔導具貸してあげる。」
遠視魔法を使いながら首を傾げるセラにサヤがべしべしと肩を叩きながら叫ぶ。サヤは得意な方面に全振りで尖っている系のため、遠視魔法などの無属性に属するものは身体強化魔法しか使えないのだ。
憤慨するサヤに、収納魔法から取り出した遠視魔導具を放り投げる。
「わ、ありがとステラ!付けて魔力流したらいいの?」
「うん。流す魔力の量で遠視の高度も上がるよ。」
「ふむふむ」
魔導具をつけて調整をしているサヤの隣では、カイが同じく遠視用魔導具を弄っていた。ボクのと違って眼鏡型のやつだけど、気になって声をかける。
「カイって遠視魔法使えたよね?なんで魔道具?」
カイが、指を眼鏡にかけてくるくると回しながらボクを見る。
「オレの趣味魔導具作りだし。丁度いいからこの機会に遠視用魔道具がちゃんと動くかどうか見ときたくてな。うまく作れてたらリトに
「喜ぶだろうけど。リトって今別の魔導具の製造に夢中じゃなかったっけ。」
「そうそう。あいつの実験室行ってもここ最近はずっと魔力探知機の研究にかかりっきりだぞ」
おかげで他にもオレから引き継いでる魔導具は全部端っこに寄せられてんのー、とぶつくさ呟くカイ。その様子だとリトが今のめりこんでいる魔導具も元はカイが後輩に研究を丸投げしたものらしい。
ロワーウ・リヒト。ボクたちの後輩の一人である、魔導具の研究をしている風変わりな少年の名前だ。
「リトは一つのものをとことん突き詰めていく系だけどカイは色んな分野のを幅広くする系だもんね」
セラが真面目に後輩たちの様子を見ながら会話に入ってくる。ボクも校庭に視線を戻した。リユラの姿を見つける。追いかけまわしているのは相棒のシャルだ。相棒から真っ先に狙う容赦ないやり方はリユラらしい。
「色んなやつしたほうが色んな事わかって楽しいじゃんかよ。ま、リトは究極に辿り着くのが好きっぽいけどな」
研究者気質なリトらしい。カイの魔導具研究は半分は趣味みたいなものなので研究者ではない。
「あ、できた!!」
魔導具の調整に手間取っていたサヤが歓声を上げる。
「お、おめでとー。じゃ、そろそろ真面目に審査役しますか。」
「はーいっ」「らじゃー」「うーい」
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