氷薔薇とラナ


「ステラ先輩できたできたこれどうですかっ!?」

「こ、これ出来てますよね……!?」

「リン姉さま出来たーっ!!」

「…………どう、ですか?」


午前中ぶっ通しで練習をして魔力も大分削れている四人の達成感にあふれた顔。その周囲には拙いながらも最後まで自力で作られた魔法。ボクは両手を四人に差し出した。


「一週間はかかると思ってたんだけどな。合格です。実戦で使うにはまだ危ない面もあるけど、数時間でこれだけ成長するなんて流石ボクの後輩だよ。」


笑顔を浮かべて、両手に作った氷の薔薇の蕾を一人一人手渡した。


きらきらとした表情で両手で持った氷薔薇を見る四人。ぱちんっと指を鳴らすと、蕾がシャランという音を立てて花びらを開いた。


「「「「わぁっ!!」」」」


歓声をあげる四人に片目を瞑ってみせる。


「頑張った後輩に先輩からの贈り物。ちょっと特殊な作りだから、魔力水につけてれば長持ちすると思うよ。」


ラナがずいっと氷薔薇をボクに突き付けてきた。ぱちくりと瞬きをする。何か不足でもあったかな?そんなボクの杞憂とは真逆に、ラナは楽し気に言った。


「髪にさしてほしいのよ!」


可愛らしいおねだりに笑いながら氷薔薇を受け取る。


「仰せのままに、お姫様。」


ラナがつけているカチューシャの耳元に差し込む。ラナが数歩下がってくるりと回転した。スカートの裾のレースがふわりと揺れる。


「ねぇねぇリン姉さまっ、どうかしら!似合う?」

「似合ってるよ。流石はボクたちのお姫様だ。」

「えへへ、ありがとうなのよリン姉さま!」


そのまま、友人たちに自慢するのか他の班に走っていくラナ。サヤにベタ褒めされているラナから視線を戻して前に向けると、残った三人が氷薔薇を片手にわいわいと盛り上がっていた。


「リィはステラ先輩に髪につけてもらわないの?」

「私は花とか似合わないので。寮の自室に飾ります」

「えぇー似合うと思うのになー!ね、アキ!」

「……うん。リーフィア、綺麗だし」

「お世辞は大丈夫です!」

「アキアキ、リィの氷薔薇取って!俺がリィにつけてあげる!」

「あちょっと何するんですかノン、アキもノンの味方しないでください?!」


和むねぇ。ほのぼのしながら見守っていると、ドンッと背中に衝撃が走る。


「うぐえ。」

「ね見て見てステラ超可愛い!!」


サヤか。いててと背中をさすりながら振り向く。


「さ、さすがに盛りすぎなのよレン姉さま?」


長く綺麗な黄色の髪をサヤによって複雑に結わえられ、もじもじと恥ずかしそうにしているラナが視界に移る。


「え、可愛い。」

「でしょでしょでしょでしょ!?!天才かな私」


サヤの班の一年生たちも手伝ったらしく、後ろのほうでドヤ顔をしている。


「何してるのー、って、ラナ似合ってるじゃん」「サヤか。髪結うの得意だもんな」


ひょこりとサヤの背後から顔をのぞかせたセラとカイがラナを見て感嘆の声をあげる。


「じ、ジロジロ見るもんじゃないのよっ!兄さまたちも姉さまたちもみんなもにやにやしすぎかしらっ!!」


照れて叫ぶラナ。取り敢えず可愛かったのでしばらくの間みんなでラナを囲ってニマニマしておいた。

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