魔法戦 炎剣
「〈炎灼弱絶〉って何?」
「あれ、知らない?」
「みんながみんな、ステラみたいに全属性を極めてると思わないでよ」
首を竦めながらひらひらと手を振って返す。
「ボクだって別に全属性極めてるわけじゃないってば。」
「ふぅん?じゃあそういうことにしとこうか?全属性全階級を自在に使える一位様でもね?」
「買い被りすぎ。」
そりゃ多少は魔法の腕には自信があるけど、そんな威張り倒すほどじゃない。本物の天才を見たら、誰だって自分は凡才だと思うよ。
「まぁ話を戻して、〈炎灼弱絶〉が何かだったっけ?」
「そうそう」
「炎属性上級魔法で、かなり特殊な魔法だよ。魔力をかなり消費する代わりに、炎の弱点である水を多少被っても消えない、っていう特性の。ちょっと前に、習得したってサヤがはしゃいでたよ。」
「ああ、そう言えば光属性にも同じような魔法があったかも」
納得がいったらしいセラはようやく視線を前に戻した。
「ならあの激戦も仕方がないね。カイは全属性を使えるけど、土以外は初級止まりだし」
そうなんだよねー。昔はやけになって全属性を文字通り血反吐を吐きながら練習していたカイだけど、ある日を境に、まったくと言っていいほど極めるための練習をしなくなった。それこそたまに、腕が鈍らないように少し使うぐらい。
それが何故なのか、残念だけどボクは知らない。訊いても、うっせ、って言われるんだよ、酷くない?
内心でむくれながら、ぱちんと指を鳴らして校庭の左半分に結界を展開させた。
それだけで察したセラが、光属性の上級結界をボクの結界に重ねて展開してくれる。
「ありがとー。」
「ま、僕の結界が割れるのが先だし必要ないだろうけどね、一応だよ」
セラが肩をすくめてやれやれとぼやいた。
「だって、サヤの剣はマジで洒落にならないから」
同時、目の前で轟音が響き渡った。
黄色の半透明の欠片が混じる爆風を手を翳してやり過ごして、セラと並んでため息をつく。
「……カイの爆発癖云々言ってたけど、サヤも大概なんだよね…」
セラが遠い目でぼそっと呟く言葉に、ボクも全面賛成である。
セラが悲しさを全面に出した顔でボクを見た。手には、先程の爆風に無数に混じっていた半透明の欠片の一つが握られている。
「さすがに、一回で砕かれるのは泣くんだけど」
それは、セラが数秒前に張った上級結界の残骸だった。
地面に散らばる無数の欠片が、光の粒子と化して消えていく。
ちなみに、上級結界は秒速で粉砕されるような柔い結界ではない。最高峰の結界魔法の使い手がほとんど潰えているなかで、実質の最上位の結界魔法となっているほどに。
ではそんな代物を文字通り秒速で一撃で粉砕したのは誰か。
「その髪燃やしてやるっ!!!」
土まみれにされてご立腹のレン・イザヤさんである。
月夜の短剣の、深紫の剣身に深紅の炎を纏わせ、周囲に数十本の炎槍を浮かべて憤怒に黒灰の瞳を染め上げ、身体強化魔法を更に強化していた。
サヤの、高い位置で括られた緋色の長髪が爆風に靡く。
先程まで余裕綽々の表情を浮かべていたカイが、真っ二つに折られた土槍を両手に頬を引きつらせた。
その、炎槍に標準を向けられて顔を真っ青にさせたカイの、赤い瞳を見たボクは。
――……やっぱり。
隣のセラに気付かれないように、息をこぼした。
――――――どうしようもなく、同類だよね。
認めたくない、けれど認めざるをえない現実に、ボクは軽く右手を振って、結界を強化すると同時に魔法式を次々と構築する。
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