後輩たちの愚痴

 

「なんなんですかあの人たち。どれだけ殺傷能力の高い魔法を連発してるんですか」


校庭の右半分で、クロ先生の課題をこなしながら私は死んだ目を校庭の左半分に向けた。おかしい。あれは絶対におかしい。


「気にしたら負けだと思いますよ、リィ。あの人たちがどれだけぶっとんだ魔法制御をしていてもっ!初級魔法で上級魔法並みの威力を出していてもっ!そしてステラ先輩が同威力展開なんて馬鹿馬鹿しい技術を平然と使っていてもっ!先輩だからもうああいうものなんです」


悟りを開いた様子で、隣で同じく課題をこなしている三角帽子を被った少女が呟く。ああ、そうだ、そうだった。もう先輩だから、いいんだ。毎度毎度つっこんでいた常識は入学して三日で終わったんだから。


深緑の髪をした少年が首を傾げる。


「あれ、同威力展開、ってなに?同時展開した魔法の威力を全部同じにすること?」


いつもの如くやいやいと騒ぐ、一年生筆頭にして級長の双子の首根っこを掴んで押さえながら、私、フローゼ・リーフィアは嘆息する。


「違うんですよ……それは等威力展開。同威力展開は、相手が撃ってきた魔法と威力を同じにすることなんです」

「相殺を目的として魔法を使う際に有効な手段です。でも込める魔力量を同じにしたらいいっていう話じゃないですし、今魔法戦をしている先輩たちの場合は属性からして違いますから変換効率も違いますし、まぁ言っちゃうとできる人はほっとんどいません」


三角帽子の友人も表情を無にして課題をこなしていく。先輩たちがいらっしゃるから平凡のように思えてしまうけれど、三角帽子の少女ー……イト・ティナも、魔法の天才だ。ノアとノンでさえ無理、というようなクロ先生の課題を今も話しながらこなしているのだから。ジタバタと暴れるノアとノンの首根っこを離す。真面目に課題をしてください。


唖然とする深緑の髪の友人に、ティナが校庭の左半分を指し示した。


「ほら、――また、新しい独創魔法です。本当に、ステラ先輩は底が知れませんっ」

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