第50話 世界の終焉に向けて

 情報が、ここまで広がれば仕方がないと思ったのか、一斉に隕石に対する情報が出始める。

 シンが言っていたのと同じ、直径10km程度の隕石。

 それが、推定時速4万3200km/hの速度で地球に来ている。


 一部の国では、何かの映画のように月面への移住とか、コロニーが準備されていると言い始めた。


 資金と、労働力を求む。

 そんな情報が、WEB上にまき散らされる。


 ただそんな情報にも、皆仕事を辞めすがりつく。

「移住に関わる仕事をすれば、潜り込める可能性がある」

 国は、出国や入国の制限をするかと思ったが、特にしないまま傍観している。


 不思議なことに、いつ来るかについては、情報がでない。

 ただ西暦という年表は、来年で終わると、アメリカ大統領が漏らした。

 その後に、『しかし、人類の歴史は、アメリカが継続させる』と喧伝していたが。


 他の国では、暴徒や色々起こっていたが、日本では意外と普通で、変わったのは、異常にカップルが増え、仕事を辞めて気ままに過ごす人が増えた。

 田舎に行けば、耕作放棄地がある。

 それを借り受け、農業を始める。


 日本を、車で旅をする。


 中には、サバイバルの訓練だと言って、キャンプを満喫する人や、異世界に行ったときの勉強だと、同じくキャンプを始める人。


 政府は、ダンジョンへの備蓄の移動と、地上にある備蓄プラントが、発生する衝撃波と津波の影響が計り知れないと、空にするためだろう。

 なぜか、ガソリンなどの値段が下がった。

 貴金属は、爆上がりしたが。


 評論家は、確かに想定される津波の規模から地上はすべて終わる。

 だが、その前に。

 隕石衝突部分近くは、破壊され衝突のエネルギーと噴火により一瞬で燃え尽き、その火が終わっても、その後は長い冬が来る。

 望みなど、どこにもない。

 あがくだけ無駄だ。そう言って世を儚む。


 シンは、皆の行動を、ただ記録している。

「ダンジョンに入れば、問題ないと宣伝し、中でのプラントまで許可したのに。人間はおもしろいね」

 だそうだ。


 ダンジョンと言えば、みんなが本気で魔法の練習を始めた。

 主に空間系。

 亜空間収納をマスターし、家財道具をダンジョン内に持ち込む。

 外で魔法が使えないため、おかげで、ダンジョン前に連日大渋滞ができる。

 政府は、いくつかのダンジョンを強制的に抑え、物資を運んでいる。

 それを知り、大騒ぎになった頃、情報が流れる。


 転移の石板。階層長押しによる、別ダンジョンへの移動ができること。


 その情報を受けて、国はダンジョン内で国家管理を宣言。

 地上消滅後は、各ダンジョンに知事を置く。

 そんなことを発表した。


 当然地価はなくなり、大量の空き家ができた。


 逆に、10階層までは人々がひしめき、それ以上は中級の駆除従事者が、管理。

 20階以上は、海もあるため、上級の駆除従事者が拠点とした。

 海産物は、従来通り持ち出せないが、塩は良いかと許可が出た。

 将来的な物は、決めていないだろうがシンの事だから、許可をしそうだ。


 普通の魚も、遺伝子情報はストックしてあるし。気分次第なのだろう。

 今も、ミノタウルスなどが、何回かに一度。牛肉をドロップするようになったしオークなども肉をドロップし始めた。


 なぜかリザードマンは、鶏肉をドロップする。


 まあ、世の中地上組と地下組の棲み分けが、あっという間にできあがり。

 人々はそれなりに暮らしを続ける。


 変化があったのは、落下予定30日前くらいだが、もう少し先の話。


 この頃から、実験か、各国がロケットを打ち上げ始めた。

 その姿は、テレビやネットでガンガンに流れる。

 それを見た人々は、どうしても、その国へ行くようだ。


 打ち上げの基地周辺には膨大な数の人々が、キャンプを張っている。

 そんな姿も、ニュースとなっている。

 ただ、その国の政府は、正式会見として、チケットはソールドアウト。売り切れだ。集まっても乗ることはできないと発表している。


 そして、ラブラブカップルと同じく、日常の中で拝む人が増えた。

 何に対してかは不明だが、一部の人は、今生きていることに感謝して、それを言葉として出しているだけだと、インタビューに答えていた。


 おもしろいことに、都会から人が減り、農村部は日常の生活。

 逆に、都会から戻ってきた人により人口は増えている。


 これは、地球の反対へ落下した時、津波を避けるためだろうと言っている人もいたが、試算では、無駄と言われている。単純に物理的な高さは300mを越えるが、地殻事ダメージを受ける。先に発生する衝撃波と津波の速度。


 問題は、どこに落下するのか?だ。


「ねえシン。どこに落ちるのかは、もう分かっているの?」

「当然、動き出したときから分かっているさ。星の動きに予想外が起きなければね」

「何処なのさ?」

「今のままなら、アメリカと呼んでいる所の西側。ギリギリくらいかな。彼らも多分気がついているはずだよ。山脈の西側では避難させているからね」

「じゃあ、日本はもろに津波がくるね」

「うん来るね」

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