四十 SNS

 次の日。彩芽が学校へ行くと、あちこちで何やら騒ぎが起こっていた。

 文化祭前に莉々愛りりあが学校に来ていた時もちょっとした騒ぎになっていたが、今日は騒ぎというよりも、動揺で満ちている。何か良からぬことが起こったということは、彩芽にも分かった。

(何があったんだろう?)

 疑問を抱きながら教室に入ると、皆があちこちで、スマートフォン片手に話をしている。雪組の教室も、他の場所と同じく騒がしかった。

「おはよう。みんな、どうしたの?」

 彩芽は近くにいたクラスメイトに話しかける。

「彩芽! これ見て!」

 クラスメイトはスマートフォンを突き出す。画面を見ると、広げた紙を横向きで撮影した画像が表示されていた。

「これ何?」

「期末の問題! うちの一年のやつ」

「えっ!?」

 予想だにしていない答えが返ってきた。

「何でテストの問題が事前に分かってるの?」

「何か、誰かがSNSに載せたみたい。投稿はもう削除されてるんだけど、画像とスクショが出回っててさ。それを友達に拡散するのが繰り返されて、大騒ぎになってるってわけ」

「そう、なんだ⋯⋯」

 彩芽は何と言えばいいのか、分からなかった。

「皆さん、おはようございます」

 その時、担任の藤宮教諭が教室に入ってきた。

 彼女の挨拶も耳に入っていないのか、まだ生徒たちは騒がしい。

「静かに!」

 藤宮が声を張り上げると、教室は静まり返った。

 皆、それぞれ席へ戻っていく。

「おはようございます。皆さんも知っていると思いますが、一年生の試験問題が外部に漏れました。SNSの投稿は削除されたようですが、画像を持っている人はすぐに消去してください。これ以上の拡散も禁止します。私たち教員は、これから調査を行います。以上です」

 それを最後に、ホームルームは終わった。


 また次の日。その日は学校がざわめいていた。

「おはよう、蘭ちゃん。何があったの?」

「おはよう。試験問題が漏れた問題、先生方が調査したらしいの」

「それで、どうだったの?」

「全くの空振り。犯人を特定するどころか、IPアドレスすら分からなかったらしいわ」

「そうなんだ⋯⋯。あっ、蘭ちゃん。今日学校終わったらカフェ行かない?」

「カフェ?」

 蘭は首をかしげる。

「うん、私がいつも乗り換えに使う駅の近くにあるんだ。最近そこで勉強するのにハマってて。良かったら、一緒に勉強しない?」

「楽しそうね。わたくしは場所を知らないから、案内してくれる?」

「分かった! じゃあ、また後でね」

 この時の彩芽は、蘭と勉強すること以外何も考えていなかった。

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