トライアングル

やざき わかば

トライアングル

「バミューダ・トライアングルって知ってるかい」


仲の良い友人同士が、共通の趣味であるオカルトの話をしている。

どうやらバミューダ・トライアングルについて語っているようだ。


「ああ、名前だけは知ってる。僕はあまり詳しくないけど」

「バミューダ諸島とフロリダ半島、それとプエルトリコを結んだ三角形の海域のことで、ここでは昔から船や飛行機が相次いで謎の失踪を遂げている、というわけだ」

「へえ、そんなに物騒な話なのか」

「ブラックホール説などもあるのだけど、UFOの目撃例も多いことから、宇宙人が関与しているという説が肯定派の唱える有力な説だ。もちろん肯定派がいれば否定派もいる。面白いのは、否定派がふたつに分かれているところさ」


つまり、事故や失踪が相次いだのは事実だが、オカルト的な話ではなく何らかの科学的根拠によるものとする派閥と、元から航空機や船舶の往来が激しいため他の海域よりも事故が多く起きているように見える。つまり何にもなかった、という派閥に分かれているのだという。


「でも、僕はやっぱり何かありそうな気がするな。調べてみたいけど、遠い外国のことだから難しいね」

「そう。その『遠い外国だから』という感覚が、俺はバミューダ・トライアングルを信じる人の根っこにあると思ってるんだ」

「と、いうと?」

「実は日本にもその魔の三角海域は存在する。ドラゴン・トライアングルって聞いたことあるかい?」

「ドラゴン?うーん、聞いたことないなあ」


ドラゴン・トライアングルとは、小笠原諸島とグァムを結んだ海域で、ここでも様々な航空機や船舶が謎の事故に巻き込まれ、姿を消しているという『日本のバミューダ・トライアングル』と言われる場所だ。


「え、でもそんなの聞いたことないよ。それはさすがに嘘でしょう」

「な?場所が近いと理解できるんだよ。そんな場所は存在しないと。でも、これが遠い外国などの話になると、途端に信憑性が高いと感じてしまう。気軽に確認出来ない、ということが、原因なのではないかなと俺は思っているんだ」

「うーん、どうだろうね…」


二人がそんな話をしている中、遠い宇宙のある星で、仲の良い友人同士が不思議な話に花を咲かせていた。


「ここからとても遠い銀河のある星域で、俺たちの宇宙船が謎の事故により、昔から多数墜落しているらしいんだ」

「我々の宇宙船は反重力装置や悪天候回避装置、ワープ機能が備わっているんだぜ?普段でさえ墜落なんて一切起こらないのに、そんなに落ちるのかい」

「落ちている、落ちている。それも原因が全く分からない。その辺境の星域ではまだ科学が進んでいないらしく、原始的な機械で空を飛ぶらしいんだが、その機械よりも落ちているそうだ」

「重力を制御できる水準にないということか」

「一度に三機落ちたこともある。大気の成分で乗組員が多数死んだり、乗組員の死体を実験に使ったり、墜落した事故現場で毎年お祭りを開催しているという話がとにかくたくさんあるんだ」

「恐ろしい場所だな」

「墜落事故率がとにかく高いから、俺も含めて、俺の友達はみんなそこへ向かうことを避けている」

「俺も気をつけておくとするか。そこはなんて場所なんだい」


「一番事故率が高い地球という星を起点として、月、金星という星を繋いだ星域。みんなはそこを『テラ・トライアングル』と呼んでいるよ…」

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