第7話(3)対松戸戦ハーフタイム

「……」


 ロッカールームに戻ってきた面々をフォーは無言で迎える。しばらく沈黙が流れる。その空気にたまりかねて、ななみが口を開く。


「フォ、フォーちゃん……」


「……一息つけたかしら? もっともアンタたちは文字通り人並み外れた体力をしているんだから、これくらいでへばってはいないわよね?」


「い、いや……」


「なによ、ゴブ?」


「普段の戦闘とはこう、なんというか……勝手が違ったものだからよ……」


「それがなに?」


「結構消耗する体力の種類が違うというか……」


 ルトがゴブの言葉に同調する。


「それは守勢に回っているからね」


「守勢に?」


「ええ、自分たちでボールを支配……ボールを回せるようになれば、体力の消耗具合もまた自ずと変わってくるわ」


「ボールを支配……」


 ゴブとルトの消耗はなによりもサイドを絶え間なく上下動させられているからではないのかとななみは思ったが、ここは黙っておくことにした。


「ということは……」


「ん?」


「後半は攻勢に打って出るということかにゃ?」


 トッケがフォーに問う。フォーが頷く。


「そうよ」


「おおっ、待ってたにゃあ」


「フォ、フォーちゃん!」


 ななみが声を上げる。


「なによ、ななみ?」


「攻めに転じるのね?」


「そうよ、このままじゃ負けるからね」


「う、うん、それはそうよね……で、でも、どうやって……?」


「……守備面の連係はある程度ではあるけれどしっかりと取れていたわ。練習通りね」


「ふむ……」


「これを後半も継続するわ」


「継続……」


 フォーはななみから視線をメンバーに戻す。


「さっきも言ったようにアンタたちの体力は人並み外れているわ。向こうは攻め疲れを起こしている……それに併せて、大量リードによって油断が生じているはず……その心の隙を突くのよ!」


「隙を突く……」


 レムが呟く。


「後半もゴブの方にボールを集めてくるでしょう。スラ、フォローを頼むわね」


「わ、分かったラ~」


 スラが頷く。


「それでレイブン……アンタも守備に加わりなさい」


「なっ⁉」


 レイブンが驚く。


「前半にトッケがやっていたような役割よ」


「ワ、ワシに守備をしろと言うのか⁉」


「ええ」


「そ、そんなことなど出来るか! ワシは魔王じゃぞ!」


「負けても良いの?」


「! ぐっ……」


「良い攻撃というのは良い守備から生まれるの。サッカーというのは連動、連携がなによりものを言うスポーツなのよ」


「むう……」


「ボール奪取も魔王ならお手の物でしょ?」


「誰にものを言っている……!」


「頼もしいわね、ボールを奪ったらドリブルを多用せず、ゴブやスラと連携して上がっていって、逆サイドのルトを使っても良いわ」


「ふん……」


「トッケは常に相手のディフェンスラインの裏を狙って、相手の警戒が分散されるから」


「分かったにゃあ」


「それと……」


 フォーはいくつか作戦を授ける。レムが頷く。


「なんだかイケる気がしてきたな……」


「オ、オラはどうすれば……?」


「クーオ、アンタは……」


 フォーがクーオに告げる。


「おお……」


「さあ、後半よ!」


 フォーが両手を叩いて、声を上げる。レイブンたちがピッチに戻っていく。

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