馬の輪舞曲

そうざ

The Rondo of Horse

 あんたの手はぺたぺたしていると言った母親。

 

 皆で転校に追いやってしまったタコチューという渾名の級友。

 

 夜中に便所に行く時にみしみしと鳴った廊下。

 

 授業中にお漏らしをしてしまって保健室で穿かされた白い体操服の長ズボン。

 

 上級生が書いた全校集会のプログラムの模造紙を紛失してしまい、その罪に打ち震えながら帰宅した夕暮れ。

 

 親父の――否、自転車の後ろに乗りながら居眠りをしていて、転げ落ちるところを伯母さんに見られた夏。

 

 十年後に掘り出そうと皆で砂場に埋めた一円玉。

 

 ――おーい、こっちに居るぞ――

 

 初恋の子と美味しくないという事で意見が一致し、その後は献立に入らなかった給食の茄子の煮浸し。

 

 修学旅行で熱を出してクラスとは別行動になり、隔離された旅館の一室で観た昔のドラマの再放送。

 

 同日に纏めて体験した初キス、初セッ○ス、初○射。

 

 校庭に乱入した――否、柴犬。

 

 何度も見た学校に遅刻する夢。

 

 精通のきっかけになったラジオ番組の素人参加型エロコーナーの喘ぎ声。

 

 竹藪を掘っていたら丸まって出て来た冬眠中の――否、蛙。

 

 クリスマスイヴ、彼女にシッ○ス○インを強要した時、肛門の周りにこびりついていたトイレットペーパーの滓を思い出しながら食べたお茶漬け。

 

 ――聞こえますか――

 

 土曜日の放課後、人影疎らな廊下の窓辺で聞いた金属バットの音。

 

 魚屋の近くで轢かれていた――否、猫の飛び出た眼球。

 

 おかずにしたページに開き癖が付いた卒業アルバムの体育祭のページ。

 

 私鉄沿線の――否、駐車場の車の陰でフェ○チ○をしてくれた彼女が、事後にコンビニで買っていた缶コーヒー。

 

 再三の注意にも懲りず私語を続けた結果、担任教師から、君達はもう明日から学校に来なくて良いですから、と敬語で言われ、そのまま早退させられ、その事実を親に覚られないよう、帰宅時間の帳尻を合わせる為にした道草。

 

 遠足で行った牧場の――これは馬で間違いなく、お椀を逆さにして叩いた効果音そのままだった蹄の音。

 

 同級生が鉛筆をロケットに見立て、図らずも僕の眉間に突き立てて出来た黒子状の跡。

 

 ――分かりますか――

 

 お祭りの夜に側溝に落ち、血だらけの脚を抱えながら食べたかき氷。

 

 給食を食べ切れず、慌てて――否、鯨肉を一気に頬張り、午後の授業が始まっても咀嚼そしゃく出来ずにもごもごと口を動かし、それを教師に見咎められ、藁半紙に吐き出す破目になった同級生。


 いたずらに瓶に溜め続け、黄ばんで分離した精液。


 初恋に気付いた矢先に、相手の子がお父さんの都合で転校する旨を発表した学活の時間。


 ――しっかりして下さい――


 デートの帰り際、今日は出さなくて良いの、と問われ、直行したラブホテル。


 口内○精をしたら、ぷはぁと美味しそうに飲み込んだ、一夜限りの女の子。


 好きな子と手を繋ぎたいと思いながらそれとは覚られないように自然な成り行きを演出しつつ必死に追い掛けた手繋ぎ――否、手繋ぎ鬼。


 ――もう大丈夫ですよ――


「邪魔するなっ、折角思い出に浸ってるのにっ」

 救助隊の呼び掛けに回転を止められた走馬灯。

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