海神の御座す場所〜一刻も早く家に帰りたい俺は海底にダンジョンを創って引きこもる〜

1.初めましてこんにちは。

初めましてこんにちは。突然ですが、俺は今ピンチに陥っています。全ての元凶は、目が痛いほどキラッキラに輝く水晶玉です。俺はこいつのお世話をしなければ死んでしまうというのです。

　……どうしてこうなったかって？

　事の発端は12時間程前に遡る。

　一応自己紹介をしておこう。俺の名前は鵜久森涼。うぐもり、りょうだ。名前はともかく、苗字が難しい。中々書けるようにならなくて、小さい頃苦労したものだ。そんな俺は実はサッカー部の部長だったりする。まあ、実力というよりは面倒事を押しつけられただけなんだが。成績はよくもなく、悪くもなく…そんな事どうでもいいから早く説明しろって？分かったよ。

　ある日、というか昨日だが、部活帰りで疲れ切っていた俺は、飯もろくに食べずに、早々に布団に潜り込もうとしていた。その時、窓の外が光った気がしたのだ。

　流れ星かな、とあまり回らない頭で考え、珍しいものが見られるかもしれないと窓を開けた。すると、満月よりも明るい星がこちらに向かって落ちてきていた。

　えっ、と思う暇もなく、その星は俺の頭にクリーンヒット。

「痛っ！！！」

＂接触を確認＂

＂接続及び同化を開始します＂

＂接続成功＂

＂同化率…10%……20%………30%…＂

　俺の意識があったのはそこまでだった。

　気がつけば俺は何処かの浜辺に倒れていた。…いや、何処か、ではない。俺は＂異世界の＂浜辺に倒れていた。

　何故それが分かったかと言うと、あのぶつかってきた星？が俺の頭の中に物理的に情報を叩き込んできたからだ。

　なんでも、あの星(仮)は異世界の寄生タイプの呪いのアイテムらしい。その世界は所謂剣と魔法の世界で、摩訶不思議なものが数多く存在している。そのうちの一つがあの星もどきこと、ダンジョンコア(長いので以降はコアと呼ぶことにする)である。コアは他の生き物に寄生し、生命力を吸い取って自分の動力しており、寄生された生き物は自分の生命力を吸い尽くされると死んでしまう。

　それを回避する方法はただ一つ。コアの能力を使ってダンジョンを作り、その中で他の生物から生命力を吸い上げ、生命活動を含めたコアの能力を使う為の対価となるDPに変換してコアに渡す。それを行った寄生主はコアにダンジョンマスターと認識され、コアの持つ権限の一切をダンジョンマスターに譲渡される。

　俺はそのコアに新たな寄生主として目をつけられ(目があるかどうかは知らないが)、異世界にまで連れてこられたというわけだ。

　マジで最悪だよ。なんでこんな理不尽な目に合わなくちゃならないんだ！？…なんて嘆いている暇もない。まあ、コアが宿主の生命力を吸い上げるのは応急処置みたいなもんで、通常よりゆ〜〜〜っくりと吸い上げるため、倒れていた時間や、もともと空腹だったことも含めて、俺の生命力がコアに吸い付くされるまであと約3時間程度はある。

　それまでに、どうにかしてコアに俺のことをダンジョンマスターだと認めさせなければならない。

　その時ふと、俺は目の前の海を見た。海、ということはそこには数多の生物が存在しているはずだ。浅瀬までやって来る小魚はもちろん、それを捕まえるなんて面倒なことをしなくとも、海水を掬えば多少のプランクトンがいるはず。

　という訳で早速やってみた。

　淡く発光しているコアを持ち上げ、そっと海水に漬ける。

　その瞬間、殆ど透明だったコアが僅かに水色に染まり、周囲の海水を飲み込み始めた。

「おお…！」

　それに伴ってコアと繋がっている俺にも力が注ぎ込まれるような感覚を覚える。おまけに、初めての食事を終えたコアに新たな能力が加わったことも分かった。どうやら、生き物以外もDPに変換できるようになったらしい。

　すなわち結果は…大成功。え、本当に？嘘違う？？感覚的にコアに認められたことは分かったが…。あ、DPの変換はコアが勝手にやってくれたらしい。

　更に手当たり次第に吸い上げたらタイムリミットが48時間に延びました。やったね！