谷底

9月の月羊

第1話

やる気のない時、無気力な時、どうすればもう一度人生と自分と向き合う事が出来るようになるのだろうか。

僕の精神は不安定で山と谷のようだ、調子のいい時は、何もかもがやり気に満ち溢れていて、とてもポジティブな思考で生活する事が出来る。だが、一度精神状況が乱れると、無気力感、劣等感、死にたいと、常に頭で考えたり無意識的にそう思ったりする事がある。

そんな時、自分はどうすれば、ポジティブな気持ちになる事が出来るのだろうか。

僕が学校を休みがちな奴から、不登校になるまでも谷を転げ落ちるみたいに短い時間で起こった変化だった。

一度谷底まで転げ落ちると、立ち上がるのがとても億劫で、しんどくて仕方がない。少し見上げると、同年代の人たちははるか上空で努力を続けていて、とても追いついたもんじゃ無い。死ぬほど努力したらもしかしたらみんなの元へ並ぶ事が出来るのかも知れないが、谷底に一人っきりの自分はとてもそんな気になる事が出来ない。そうなるともう、終わりだ。人間は良くも悪くも環境に適応出来る生き物で、その暗くて惨めな谷底での生活に慣れてしまうと、どうせ自分なんかと、努力しない理由ばかりを探し求める毎日だ。

どうしてこうなったんだって、後悔する毎日の原因を過去にばかりに探して、今に、未来に目を向ける事をしなくなる。そうすると、明日も明後日も一週間後もきっと後悔した日になる、そうして負のループの出来上がりである。

人間は愚かで見たく無いものから目を逸らす事が得意な生き物だが、小さなきっかけで奮い立つ事だって出来るのだ、例えば、誰かからもらった何気ない言葉、誰がの人生像、己の気まぐれ、など、人間は変わる事が出来るのだ、こんな事もう何百人、何千人の人が言っている事だが、人類が誕生して700万年の間に星の数ほどの人間が生まれては死んでいった。僕たちはそれだけの数の人生の上に立っているのだ、きっと大多数が言っている言葉にはそれだけの重みがあるはずだ。

だからもう一度言わせてほしい。

人間は変わる事が出来る。

今は、真っ暗で光なんて見えないかも知れない、自分という存在に疑問を覚えることもあると思う。だが、誰かが言ったように開けない夜は無い。

太古の生き物たちは氷河期という未来の閉ざされた闇の中でも日々を生きて、今日まで命を繋いでくれた。未来なんて考えなくていい、見なくていい。だが気が向いたらで構わない、過去から現在に目を、意識を向けて欲しい。カレンダーやスマホなどで、今日の日付、曜日、今の時間などを、一瞬確認するだけで良い。それは、大きな進歩だ。月面着陸がなんだ、電化製品の三種の神器がなんだ、そんなものより、君の一歩の方が勝るに決まってる。

劣等感を覚えることはないよ。

人間は皆根本的なところでは皆孤独な生き物だよ。他者と自分を比べて、足りないものを見つけては自己嫌悪をしてしまう生き物だよ。でもそんな時こそ目を背けたら良い。

君の未来はきっと明るいから、あの時よりはマシだよなって思える日がきっと来るから。

君の明るい未来を、いや明るくなくたっていい。少しでもその場所から一歩でも、歩いてみようかなって思える日が来ると事をただ願っています。

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谷底 9月の月羊 @Kisinenryokunn

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