愛想笑い

オオカミ

愛想笑い

私は何が好きなんだろう。

よく他人から好きな物はと聞かれることがある。

その時何となく濁して誤魔化してしまう。

または在り来りな物を口にしてしまう。

周りからは出来た人、優等生などと言われ、

親にもとても期待の眼差しでみられている。

常に笑顔でいる事に慣れてしまった私は、

気がついた時には感情の起伏がほとんどない事に。

褒められたとしても注意されたとしても、

喜んだ様な顔や悲しい様な顔をしていれば、

その場は過ごせ周りは喜ぶと。

そんなある日、転校生が来た。

転校生は明るく、すぐクラスの

ムードメーカーとなった。

転校生が来て数ヶ月が経ち放課後、

たまたま2人きりになった。

転校生がふと前の席に座り、声を掛けてきた。

「いつも楽しそうなフリしてて楽しいの?」

と。

何か背中に冷たい汗が流れた気がした。

「何がそうしたのかわからないけど、

もっとさらけ出していいと思うよ?」

笑顔で次々と言われる言葉に

私は何も言い返せなかった。

その日の夜ご飯は喉の通りが悪かった。

早めに部屋に戻り横になった。

横になった後ずっと言われた言葉が離れなかった。

心臓はずっと何かを訴えるかのようにバクバクと

動き続け、その音がすごくうるさかった。

私にとって感情とは要らないと思っていた。

だからあの転校生に言われた言葉が、

今までの自分を否定されたような気がした。

まるで今の自分は感情を押し殺してるのだと。

その日から私はより愛想笑いが強く根付いた。

親の前でも、クラスメイトの前でも。

たまに転校生から不安そうな視線を感じるが、

見ないふりをしていた。

そして月日が経ち卒業間際の放課後、

私は屋上へと足を向けていた。

靴を脱ぎ柵へと手をかけると後ろに引っ張られた。

「ダメだよ?一緒に卒業するんだよ?」

『今後楽しいのかわからないのに?』

「私に任せて。卒業した後もちゃんと一緒にいるから。楽しませるよ、貴女の事。」

その言葉で私の頬に温かいものが流れた。

「そんな感じで少しずつ感じていこうよ」

笑顔の転校生に私は頷いた。

そして2人で無事卒業した。

2人で撮った写真には笑顔が輝いていた。

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愛想笑い オオカミ @DendokuTOKAGE

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