2 プロローグ
何故こうなった………………………………。
オレは、世界の観測者アラウンド。
まぁ、この名前は観測している世界の名前だが…………。
とりあえず呑気に自己紹介してみたが、実はそれどころではない。
オレの観測している世界、アラウンドがぐちゃぐちゃになって進んでいるのだ。
人間に啓示を与えても何も変わらない。
オレだけではどうしようもない状態だ。
これはもう、あの手を使うしかない。
そうオレが決めた瞬間。
「よう! アラウンド。調子はどうだい?」
と同僚のエスクがやってきた。
(はぁ…………タイミングが悪すぎる)
オレは胸中で愚痴を溢し、やって来たエスクに返事をする。
「まぁ、あんまり良くないな」
「そうなのか。軌道が良くなったら声かけてくれよな。一緒に騒ぎたいしな」
「ああ、またな」
ただ、エスクは宴の話だけだったのか、すぐに踵を返した。
オレは内心ホッとし、止めていた手続きを進める。
「えぇっと…………この子が従順そうだな。よし、この子に近くの二人で…………さあ、助けてもら――――」
「えい」
「え…………」
完了目前に、帰ったはずのエスクが背後から手続きに手を加える。
順調に進んでいた三人の地球人の召喚は、エスクの手によって変化し、ごちゃごちゃとした設定になってしまう。
それを慌てて止めようとするも、時すでに遅く変更不可。
オレは、背後から聞こえる笑い声にイライラし、
「やったな、エスク。これはルールだから仕方ない。さあ、お前の世界を弄らせて貰う」
と低い声で告げる。
すると、エスクは思っていた反応と違ったのか、慌てて謝り許しを乞い始める。
今までなら良かったのだが、今回は洒落にならない。
そのため、
「ダメだ」
とオレは短く告げて、エスクの世界を弄る。
順調に進んでいたのか、エスクはオレが世界を弄る間泣き喚いていた。
その後、エスクと別れて自分の世界を眺める。
すると、アラウンドは、オレが目指した平和な世界とは別の道に進もうとしていた。
「マジかよ…………エスクのやつ、めちゃくちゃにしやがって……」
今起きている現状を画面で眺め、思わず言葉を溢す。
召喚した地球人が、すぐに世界をめちゃくちゃにし始めている。
オレはそれを観て嘆くことしかできなかった。
「紛れた金髪野郎に《精霊の祝福》が渡されてるじゃないか。《勇者》と別なら意味が無い。終わりだ、この世界。はぁ…………次の世界を創るか……」
オレはエスクのせいでおかしくなった世界を諦め、新たな世界を創造し始める。
それから数時間と作業を続け、息抜きがてらおかしくなったアラウンドを眺める。
すると、先程とはまた違った方向に世界が進み始めており、オレは詳細な記録を取っていった。
「マジかよ…………男二人が暴走だ…………いや、地球で抑えられたモノがこっちで出てるのか。てか、金髪野郎に《勇者》が移ってるし。これなら何とか――――って、コイツ王国破壊してるしッッッ!!!!!!」
過去になかった現象に、オレは若干興奮しながら記録を取り続け、新しい世界を創るのを放棄した。
「まさかエスクのおかげで面白くなるとは…………後で謝るか。くぅううう、これだからやめられないよな――――」
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