第19話 デート?んなわけないじゃん
茉白は映画館の前に立っていた。どこからどうみても、美人だ。ナンパな男たち相手にも、ツンッ!とし、冷静さを崩さない。そんな、茉白に気付きながら、傍からそんな茉白を見つめている男がいる。
新だ。
新は、自分から誘っておいて、何とも言えぬ恥ずかしさを前の夜から抱いていた。なんで、茉白を誘ったのか…いくら勉強を教えてもらっているからって、こんな、デートの様な催しを開く意味はあったのか…。
(だって、あの水無月だそ?俺みたいな馬鹿と一緒に1日を過ごして楽しいもんか?…でも、もうあそこ水無月いるしな…)
変な脂汗まで出てくる始末。待ち合わせ時間を10分過ぎた頃、茉白が辺りを、見渡し始めた。恐らくは新を探しているのだろう。
(い…行かなきゃな…!)
新は、茉白の方へ、歩み寄って行った。
「よ、よう!水無月!はよ!!」
「……」
「な、なんだよ…」
茉白の何とも言えない表情に、新は何事かと思った。
「私、初めて見た。右手と右足が同時に出てる人」
「え!?」
「…ぷ…あははははは!!何よ!そんなに私を笑わせたかったのぉ?大丈夫。毎日笑わせてもらってるから」
茉白は大笑いした。その見たことのない、茉白の大笑いに、新もつられて大笑いする。
「おっかしー…。じゃあ、10分遅れたお詫びとして、チケット代とポップコーン代、それにコーラのLもおごりでね!!」
「え、えぇえ!!??」
(俺、水無月来る30分前から来てたのにぃ!?)
言いたくても、言えない、新だった。
*****
「結構面白かったね」
「おう!あのアクションはスゲかったな!!」
「うん。私、普段あんまりアクション映画ってみないんだけど、たまにはいいかもね」
新は、思っていた。さっきから、心臓がうるさい。茉白の方を向けない。話すことと言えば、映画のこと、ポップコーンとコーラをおごらされたこと…、言えなかったのは、茉白が来る30分も前から待ち合わせ場所(近く)にいたこと、そして、何故か、心臓がうるさいこと。
茉白の普段着は、思った以上に可愛かった。少し長めの丈のスカートは、茉白の性格がよく出ている。小さなハンドバッグに入っているのは一体何だろう?そんな小さななバッグで、お財布や、ハンカチ、ティッシュ、携帯…全部入っているのだろうか?自分のリュックには、何故か大量の荷物が入っている。何に必要なのかわからない、ゲームの攻略本とか、こんな時に持ってくること無いのに、男子で貸合いしている、エロ本とか…、見られでもしたら、一巻の終わりなのに、つい癖で持ってきてしまった。
「篠原くん、どうせだ。お昼でも食べない?」
茉白が笑顔で問いかけて来た。茉白もまんざらではなさそうに、このデートらしき催しを楽しんでくれているようだ。おごることを覚悟したが、茉白は何のことはない、とこう言った。
「映画のお礼に私がおごるからさ」
「え?でも、そこは男だろ!」
「なんで?」
「なんでって、デートくら…」
「ははは!良いの良いの!!これは、デートじゃないんだから!貴方、馬鹿?デートのつもりでいたの?思い上がりもいいとこね」
そう言うと、茉白は素早く新の前に進み、その後の茉白の顔を、新が見ることは出来なかった。
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