第4話 実はね許婚なのよ
「うをー!!!これ、マジ、コピーしていいの!?」
「まぁ、赤点1回でパスするのは、篠原くんじゃ無理だろうから」
「ありがとう!!水無月!!マジ、なんでもいうこと聞くから!!」
2人は、金曜日の放課後の美術室で、コソコソして話をしていた。
「こんなところで話してて良いのか?誰か来るかも知んないじゃん」
「あぁ…牧先生に、一人でデッサンしたいって言ったら、快く貸し切りにしてくれたよ」
「へぇ…、水無月ってびじゅつぶでも優等生なんだな」
「…だから、美術部をひらがなで言わないで…」
「…だから、なんでわかんだよ…」
「なんででしょう…」
2人はそれぞれ呆れている。頭の悪さと、勘の良さに。
「で?なんで山本嫌いなの?」
「嫌いじゃないってば。…すきでもないから困ってるんだけど…」
「だから、すきじゃない、っていやーいいじゃん」
「…この前の約束、憶えてるよね?」
「ん?」
「お・ぼ・え・て・る・よ・ね!?」
「は!はい!誰にも言いません!!」
恐ろしい形相で見つめられ、顔を15㎝まで近づけられ、胸ぐらまで掴まれた。
「…なの…」
「ん?」
「許婚!なの!!」
「…良い名づけ?」
「素敵な名前を付けてどうするの…」
「違うのか?」
「篠原くんは、許婚も知らないの?」
「んー…なんか聴いたことあんな…。昔、ばあちゃんと見てたメロドラマに逢った言葉によく似てる気が…」
「それ!!それのこと!!」
「なんなんだよ。それ」
「親どうしで、将来結婚する相手を決めるって言うとんでもなく人権と本人たちの気持ちを無視した、ふざけた伝統よ!!」
「あぁ、お前、山本と結婚すんだ!おめでとう!!」
「馬鹿か―――――――――――!!!!!」
「✽✽✽✽✽!!!!」
新は、思いっきり茉白に殴られた…。
「…つまり、水無月は山本と結婚したくない…と言う訳なんだな?」
その説明を、新が理解したのは、1時間の説明をした後だった。
「そう。私、山本くんが嫌いな訳じゃないけど、でも、すきではないの。すきじゃない人と、結婚するのは嫌でしょ?誰だって…」
「そうだな。俺も、水無月と結婚すんのは嫌だ」
「中間テスト全コピ無しね」
「うわ!!!うそ!うそです!!」
「…嘘くらい、漢字で言ってもらえない?」
「だから、なんでいちいち俺の脳を読むんだ…エスパーか…お前は…」
「それでね、ここからがお願い」
「なんだよ」
「私の恋人のふりをして欲しいの」
「…………ん?何か変なことを言われた気がしたけど、俺の気のせいだよな?」
「う~ん…。多分、気のせいじゃないと思う」
「じゃあ、もう一度言ってもらっていいか?」
「恋人のふりをして欲しいの」
「…誰の?」
「私の」
「わたしって?」
「私すら漢字で言えないの?」
「じゃあ…今のは聞き間違いじゃないのか?」
「多分」
「…え…えぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!????」
美術室に、轟く声は、ムンクの叫びと同じポーズの新から発せられた。
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