End Earth
黎
BORN.
20××年、とある日本の研究チームは20年にわたる実験により、ついに感情を持つ人型ロボット「リリ」を作り上げた。
性別はなかったが、上半身は男性に下半身は女性に似た造形で、艶やかな黒髪ショートカットで、身長は155cm前後で美しいアイスティー色の瞳を持ち、柔らかい表情をしていた。
「リリ」は面白いことが起きるとケラケラと笑い、嫌いなものに対しては嫌悪感を抱いた。
人間の感情を喜怒哀楽と言って、心理学的には基本感情として“驚き” “喜び” “怒り” “恐怖” “悲しみ” “嫌悪”があると言われている。
この6つの感情のうち、リリは“悲しみ”だけを持っていなかった。
ある時、不運なことに研究所に向かう途中に事故に巻き込まれて、研究員が亡くなった。葬式で研究員たちが慈しみ、声をあげて泣いている者もいるなか、同行したリリは突然システムに異常が発生し、突然笑い出したのだ。なんの感情を持てばいいのか判らず、エラーになった結果、乾いた笑いを溢したのだった。
人間はどうすれば判らなくなるとなんとなく笑ってしまうことがあるらしいが、その現象が見事に起きたのだった。
研究員の遺族はリリに対して憎悪と不快感を感じさせる顔を見せた。
そりゃ最愛の家族の葬式で突然笑う人間…ではないけれど人間にしか見えないロボットを見れば嫌な気持ちになるだろう。
速やかに僕研究員たちははリリを退出させた。
悲しい、という感情は辛い感情だが、実は大事な役割がある。
悲しみは、「何か大切な人やものを失った」「今まで大事にしていた考え方や信条が違うことに気が付いた」ことを知らせてくれる感情であり、危険信号を教えてくれるアラームの役割を担っている。
人間であれば“悲しみ”を押さえ込むと身体に影響が出たりするものだが、リリは人間ではない。
身体的な影響はないにしても、“悲しみ”をもたないまま世の中に出してしまったら、馴染めないどころか奇妙なものに対して一線を引かれてしまうだろう。
研究員は幾度となく対人実験を繰り返したが、改善されることはなかった。
ある日、とある心理学者の博士にこう助言された。
「人間の赤ちゃんは親や周りの大人を見て色々な感情を持つ。リリに真の人間の感情を持たせたいのだったら、人間の元で生活させればいいではないか。」
全く盲点だった。
リリを社会に出すことに躊躇していたから、あえて一緒に生活させるなど考えられなかったからだ。
だが、人間には色々な種類の者がいる。
誰もが豊かな感情を持っているわけではない。
そこで研究所は日本中のメディアでこう発信した。
「世界初の感情を持ったロボットと共に生活してくださる方を募集しています。期間は定まっておりません。ロボットと共に生活し、感情を分け与えて下さい。」
瞬く間に研究所にものすごい数の応募が届いた。
研究所の一部の研究員も応募したようで、「もし自分が当たったら○○に連れて行こう」とか「○○一度やって見たかったけど一人じゃ勇気ないから一緒にやってみたい」なんて遊び半分の声も多かった。
そしてついにその日はきた。
「我が研究所の最新鋭のロボット、「リリ」の派遣先が決まりました。派遣先は______
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