怪異奇談 〜転移したら少年漫画の世界だった〜
かさね
第一章 星羅、主人公と共闘する
第1話
「んん……痛い」
───私、姫宮星羅はキョーレツな痛みに襲われて目を覚ました。
腕と足は擦りむいて出血しているし、痣も身体中にある。
そりゃあ、痛いわけだ。
「えーっと、ここどこ」
周りを見回せば、自分が暗い山の森の中に一人でいることが分かる。
生い茂った葉は風で揺れていて、ひんやりとしている。少し肌寒い。
どういうこと?私は確か社会見学で歴史博物館に来てたはず……。
しかし、建物どころか人影すらない。
夢かと思ったが、今の状況は夢にしてはリアル過ぎる。
それに、頭も至って冷静だ。
「どうなってんの、これ」
信じられないような状況に目を見張ったその瞬間、突然周りが眩い赤い光に覆われた。
よく聞き取れないが、かすかに何か石のような物がぶつかった音も聞こえてくる。
光があるのをいいことに手元の時計を見ると、針が狂っていた。
この状況でこんなことある?
光と音が止み、遠くの方を見れば黒から紫色に変わりゆく空。それに、一筋の陽の光。
こんな状況じゃなきゃその美しさに感動したかもしれないが、今はただ戸惑うばかりだ。
あの光も意味わかんないし……。
一度、思い出せる限りの記憶を思い出してみることにした。
まず、私が中学校の社会見学で歴史博物館へとやって来たのは覚えてる。
そこからグループ活動が始まって、メインの博物館から少し離れた場所にある昔建てられた屋敷に行ってその後は───。
思い出そうとするとズキリと頭が痛んだ。
何故か屋敷に入った後の記憶を思い出せない。
そもそも、どういう流れで屋敷に行くことになったのかすら靄がかかっているせいで思い出せなかった。
グループのメンバーと話したのは覚えてる。ただ、何を話したのかは覚えていない。
考えているうちに、辺りは大分明るくなっていた。
さっきまでは暗くて不気味だったけれど、明るければ緑の多い綺麗な場所だ。
こんな場所で不可解な現象が起こっていたなんて信じられないくらいに。
考えても何も分からないなら動くしかないか。
私はまだ血の出ている傷口を拡げないように気をつけて立ち上がり、近くに落ちていた学校指定の鞄を手に取った。
そして、下の方に見える屋敷のような建物に向かって下山を始める。
あそこに人がいれば、おそらく今の状況くらいは分かるだろう。
山道というだけあり、道は険しい。
舗装されてない山道を下るのは結構大変で岩や木、下り道に細心の注意をはらいながら降りていた。
そして、少し平坦になり始めた道で私は思わず立ち止まった。
「……なんでこんなところに人が」
先程まで同じような状態だった自分が驚くのも変な話だが、目の前には同い年くらいの少年が横たわっていた。
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