第13話 マイカ・アウローラは泣いている女の子を連れて『レティシアの錬金工房』に向かう
泣いていたのは茶色の髪を二つに分け、三つ編みにした女の子だ。
粗末だが清潔な身なりをしている。孤児ではなさそう?
私が泣いている女の子の前に立つと、目の前に選択肢が現れた。
【選択肢】「どうしたの?」/「うるさい!!」
私はゲームで悪人ロールをしたいとは思わない。だからここは【選択肢】「どうしたの?」一択だよね。
私は【選択肢】「どうしたの?」を選んだ。
「どうしたの?」
私が選んだボイスで泣いているNPCの女の子に問いかける。
NPCの女の子は、泣きじゃくりながら私に説明を始めた。
ゲームだから、質問を無視して大泣きし続けるということはない。
リアルの子どもは、質問をしても無視することとかありそうだけど……。
「お母さん、の、誕生日……ひっく、プレゼント、盗まれた……っ。お兄ちゃんが……ひっく、取り返すって、あっちに……っ。お母さんに、暗い道、往ったらダメって言われてたのに……っ」
迷子イベントとスリイベントが混ざった感じみたい。
あ、選択肢が出た。
【選択肢】「家はどこ?」/兵士詰め所に連れていく/放っておく
どうしよう。【選択肢】「家はどこ?」を選んで悠長に会話をしている場合じゃない気がする。
兵士詰め所って、ここから近いのかな? 私、詰め所の場所ってまだ確認していないんだよね。
【選択肢】兵士詰め所に連れていくを選ぶと、もしかしたら場所がわかるようになるかもしれないけど、でも『レティシアの錬金工房』に行く方が早いかもしれない。
選択肢を無視して女の子の手を引っ張って『レティシアの錬金工房』に行けないかな?
私はそう考えて、女の子の手を握った。
「お姉ちゃん、どうしたの……?」
女の子はそう言って、怯えたような顔をした。私は選択肢以外では喋れないので、微笑んで肯く。
微笑んだ私を見て、女の子は困ったような顔をした。うん、そうだよね。困るよね。
でも、つないだ手を振りほどく素振りはない。とりあえず『レティシアの錬金工房』に向かおう。
『レティシアの錬金工房』への道は覚えているはず。たぶん。
オプションの『ナビシステム』はメインストーリーが進むトリガーがある場所への道が、赤く表示されるだけだから、サブイベントとかクエストは自力で頑張らないとダメなんだよね。
女の子は5歳くらいに見える。私の腕力値は1しかないから、抱っこして連れて歩けない。とにかく、なるべく早足で歩こう。時間が経つと、女の子のお兄ちゃんが怪我をしてしまうかもしれない。
私、ゲームだけどNPCには怪我してほしくない派だから頑張ろう。
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