第34話 無理です!

 こんなところ誰かに知られたら、どうするんだよ!


 超絶美少女の伊集院に上目遣いで上半身をキスされたり、舐められたりしているとおかしくなってしまいそうだ。


 まだ理性を保てている間に俺は、狭い個室に入って、もうその気になってしまっている伊集院にお願いした。


「腕を首に回して」

「うん」


 素直に応じた伊集院、俺は淫魔サキュバス化した伊集院の太ももを抱きかかえ、身体ごと持ち上げる。


 伊集院の身体を俺が抱え上げたことで、狭い個室のドアに彼女の背中が当たり、ドアのヒンジと鍵が

かたかたと音を立てていた。


 もし彼女を股間を起点に抱えあげたまま鍵が壊れでもしたら、と思うと身体の芯から燃えるように興奮してくる。


 ブラ越しだが伊集院のとてつもなく柔らかいたわわが俺の胸板に当たって潰れているが、彼女の高鳴る鼓動が、体温がしっかりと伝わってきていた。


「けいくん……処女の私にこんな激しそうなえっちしたいだなんて、ドスケベさんだよね。でもそこが好き」

「どっちがだよ。俺を誘惑してきたくせに」


 軽く揺れると俺と伊集院の股間がこすれて、気持ち良さで声が漏れそうになった。俺だけじゃなく、それは伊集院も同じで鳴いている声をキスで塞ぐ。


「「んん……」」


 本当はこのまま全部れるまで伊集院を思いきりわからせてやりたい。


 息が切れそうなくらい長いキスのあと、ゆっくりと離れるとお互いの身体が恋しいのか唾液だえきが糸をひいている。


 俺たちはじっと見つめ合う。


 お互いに求愛の準備が整ったような息づかいと、伊集院の焦らさずに早くしてほしいといった瞳がたまらなくかわいい……。


 俺は自分の欲望に従い、伊集院に頼み込んだ。


「伊集院、俺は制服を着たままするほうが好きなんだよ」

「うん……」


 俺は抱えた伊集院を下ろす。


 すると身体は伊集院から離れたくないのか、無意識のうちに彼女の腰に手を添え、唇を奪ってしまっていた。


「けいくんのキス、熱い……」

「梨衣の唇が魅力的すぎるんだよ」


 このまま流れに身を任せられれば、どれほど楽で気持ちよいんだろうか。


 俺だけにエロい姿を惜しげもなく見せてくれる伊集院、ブラジャーとパンティ、ニーソに上履きだけとなった彼女を見れるだけでも幸せなはずなのに。


 伊集院がブラウスのボタンを留め、ブラウスの裾をスカートの中へしまおうとしたときだった。



 ――――どんどんどん!



「ひゃっ――――んん!?」


 いきなり個室のドアがノックされ、伊集院が声をあげてしまいそうになるのを俺は慌てて彼女の口をふさいで、隙間から外の様子をうかがうと驚きの人物がドアの向こうに仁王立ちしていた。



 なんで桜ちゃんが男子トイレにいるんだよ!?



「経世に伊集院! 二人がそこにいるのはわかっている。すぐに出てこい!」


 なっ!?


 俺と伊集院は桜ちゃんにすでにバレていること驚き、顔を見合わせた。


 俺たちはなんとか制服を着ており、鍵を開けて外に出ようとしたときに、


「待って!けいくん!」


 伊集院が俺の頬を両手で掴んで、少しだけ踵を浮かせ口付けしてきていた。それだけで伊集院との秘密の逢瀬おうせが恋しくてたまらなくなってしまう。


 彼女にしてみれば、ドアの向こうにいるのが恋敵の桜ちゃんだということもあるんだろう。


「いいか? あけるぞ」

「うん」


 桜ちゃんにどれほど叱られるのか、わからないが俺と伊集院はお互いに見つめ合い、頷くと個室のドアを開けた。


「やっぱりか……さっき男子生徒から二人がトイレの個室にこもっていると知らせてきて見にきたらこれだ」


 桜ちゃんは額に手をやり、呆れた様子見で俺たちの顔を見る。


「伊集院は悪くない。俺が誘った。それに目的はちゃんとある」

「目的だと? なんだ言ってみろ」

「その前に答えて。桜ちゃんは俺と伊集院がトイレの個室でなにをしていると思ったの?」


「そんなこと、ひとつに決まっているだろ……」


 俺が訊ねると桜ちゃんは伏し目がちになり、はっきりとは答えてくれない。


「俺は伊集院に中学のとき男子たちにいじめられていたときの話を訊きたいと思ってお願いしてたんだよ。桜ちゃんに誤解させてしまったことは申し訳ないと思っている」


 男子たちから通報があった以上、桜ちゃんは教師として俺たちを処分しないといけないはずだ。だが伊集院が俺を誘ったなんて答えたら、嫉妬も相まって最悪、彼女は停学程度では済まないだろう。


 ただ伊集院の下着姿が目撃でもされれば、俺たちは二人とも退学になってたかもしれない。


「けいくん!」

「経世……」


 俺が毅然きぜんとした態度で答えたことから、二人は俺の顔をそれぞれの想いで見ていた。


「桜ちゃん、伊集院は悪くないから。処分するなら俺だけにしてくれ」

「もういい、放課後までに反省文を提出しろ……」


 えっ!?


 いやそれだと俺の計画が狂うんですけど……。


 桜ちゃんはどこか腑に落ちない様子で男子トイレをあとにしてしまう。


 俺と伊集院もそれに続いたのだが、外にでたあと伊集院からシャツの裾を引かれる。伊集院のスクールニットは袖が長いのか、手の甲が袖口に隠れて指だけで摘まむ仕草がどこか幼さを伴い、俺にかわいらしく感じさせた。


「ありがとう、けいくん」

「いや別になんもしてねえよ」


 実は停学になれば伊集院の監視から距離を置けると思ったんだが、そう上手くはいかないようだった……。


 このままいっしょにいたら、一線越えてしまいそうで。桜ちゃんも学校だから抑えていたけど、三人でとか暴走しかねないのだから。


 ぐぅ……。


 教室に戻ろうとしていると、お腹が鳴いたような音がする。


 伊集院は顔を両手で覆ってしまっていた。


 えっちなことには積極的なのに、些細なことで恥ずかしがる乙女な彼女がなんとも愛らしい。


 そう思っていると俺のお腹もぐぅと鳴いたことに、


「俺もだよ」

「うん、おんなじだね」


 伊集院は覆った手を離して、はにかみながら笑ってくれていた。


 結局俺も伊集院も食欲より性欲を優先してしまい、昼ご飯を食べられなかったんだから仕方ない。



 教室に戻るとクラスメートたちが伊集院の席の周りを囲んでおり、なにやら騒がしい。


「梨衣! どこ行ってたんだよ」

「あ、うん、ちょっとね……」


 水上が伊集院に訊ねてきたのだが、その声に反応したのか人集りのなかをかき分け、眼鏡をかけたイケメンが俺たちの前に立ちはだかる。


 耳がすっぽり隠れるくらいの長さでセンターパートの特徴的な髪型は俺でも知ってる人だった。


 彼は俺たちのひとつ上の先輩で生徒会副会長の福岡先輩、スポーツ万能に加え、勉強もできる。簡単に言えば、異世界恋愛のスパダリみたいな人。


 そんな彼が悲しそうな目をして、伊集院に語りかける。


「伊集院さん……どうして来てくれなかったんだ。ずっと待っていたのに」


 しかも俺を無視して、いきなり伊集院の両肩に手を置こうとするので、警戒されてしまい彼女は俺の後ろに隠れて、うーっと子犬のように先輩に対して唸っていた。


「誰だ? キミは」


 先輩は有名人だから、一年の俺たちに知られているけど、モブ陰キャの俺が名前を訊かれるのも、まあ当然だよな。


 木崎並みか、それ以上のイケメンだけに先輩を見つめるクラスの女子の眼差しが熱い。興味なさそうに向こうで水上は欠伸してるけど。


 伊集院が隠れたことで、矢面に立たされた俺は先輩と対峙せざるを得ない。


 俺はここでようやく察しがついた。


 朝、靴箱に入っていた封筒を差し出したのは、先輩で伊集院が無視したことで直接乗り込んできたってわけだ、たぶんだけど。


 面倒くせえ!!!


 伊集院がちゃんと手紙読んで、返事してればトラブらなくて済んだのに。つか乗り込んでくるんなら、手紙送る意味がないような気もするんだが……。


「俺は鈴城っていいます。イケメンだからって、女の子の身体に触れてくるとかセクハラですよね? なんでも許されるとか思ってたら、大間違いですよ」


 俺が先輩に一歩も退くことなく、きっぱり答えると俺の後ろに隠れている伊集院はこくこくと深く頷いていた。


「はあ、キミは先輩に対する態度がなってないな……」


 先輩は伊集院に向ける笑顔は優しいものなのだが、俺に視線を移すと態度が一変してマウントを取ってくる。


 福岡先輩はフリーになった佐竹先輩にアタックして轟沈したって噂があり、身代わりの早すぎる彼に俺は正論砲を放った。


「態度もなにも待ち合わせの場所に彼女が現れなかったということは、交際する意思を持ってないってことでしょう。なんならここで告白するつもりなんですか? それなら振られて恥をかきにきたとしか思えません」


「なんだと!? ああ、いいさ、言ってやるよ! おまえが伊集院さんとどういう関係なのか知ったこっちゃない。恥をかくのはキミなんだからな。なにを隠そう、俺はリュノン・スーパーボーイ・コンテストの審査員特別賞をもらった男なのだからな」


 大丈夫かな?


 先輩、自分でハードルあげてしまってるんですけど……。


 そこまで先輩が言うなら仕方ない。


「やだよぉ。私が好きなのはけいくんだけなのなのに~」

「でも話くらい聞かないと収まりがつかないし、嫌だったらきっぱり断ればいいんだよ」

「わかった、そうだよね」


 ざわつく教室で伊集院と福岡先輩の周りをクラスメートたちが取り囲んで告白の行方を固唾かたずを呑んで見守っている。


「伊集院さん! 俺はキミのことが好きなんだ。付き合ってくれ」


 先輩は片膝を床について、手品かなにかわからないが、胸ポケットから一輪の薔薇ばらの花を出して、伊集院に告白していた。


 クラスの女子たちは、ぽーっと先輩の仕草に指を互い違いに組み、イケメンからあんな告白されてみたいといった表情をしている。


 が……。


「嫌です! 無理です! キモいです! 金輪際こんりんざい、私に近寄らないでください。はっきり言って、趣味じゃないです。つぎに身体に触れようとしたら、警察に駆け込んで接近禁止命令を出してもらえるようにお願いするくらい迷惑です。私がけいくんのこと好きなこと、見てわからないとか頭おかしいんじゃないですか?」


 ――――伊集院さん、サイコー!


 ――――ヒューヒューッ♪


 伊集院が、これでもかと先輩の告白に対する嫌悪の返事をすると、イケメンの先輩のことを苦々しく思っていたクラスの男子たちからスタンディングオベーションが上がっていた。


 それから、数名の女子が先輩に声をかけていたのだが、先輩はうなだれたままだった。間もなく昼休みが終わり、チャイムが鳴る。


「おーい、福岡。もう授業始まってるから、自分の教室に帰れ」


 石像のように固まった先輩に五限目の授業に来た現国の先生が声をかけるが、


【返事がない。ただのしかばねのようだ】


 になり果ててしまっていた。


―――――――――――――――――――――――

ヤンデレ梨衣たんイケメン殺しw

もっと梨衣のデレを見たい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。


経世と梨衣がリモートなえっちをしちゃうSS、第35.5話 リモートえっち前編を書きました。


https://kakuyomu.jp/users/touikai/news/16817330656436186571


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リモートえっち後編も書いたんですが……申し訳ありません、作者の筆力不足でカクヨムのガイドラインに逸脱してしまいました。ただいまnoteにて無料公開しておりますが。お読みになりたい方はnoteで東夷と検索してください。


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