リプレイ06 ダルいから無題(語り部:MAO)
……何と言うか。
アンタのそういうとこがダメなんだよって、面と向かって教えてあげるのも“仲間”なんじゃないの?
それとも、そう言うコントを楽しんでるとか?
仲間のアレさ加減をスルーする系のギャグ。
彼女に本気で魔術を使わせたくないなら、
まあ、否定はしないし肯定もしない。
考えるのが、ただダルいだけ。
悪いのは、いつもボク。
ボク以外の人間は、みんな正義。
さて、
やっぱりこう言う時のデコイとしては、ボクが適任だね。ちょっと具合の悪そうな、絶妙なポーズを作ってやる。
仮病は、ボクが誇れる数少ないリアルスキルだよ。
さて、スタッフであるキャストは三人。
ちょうどいい数だね。
どうでもいいけど、全員、女性。
「あっ、あの、すみません……」
ボクは、ごく自然に、眩暈の症状をエミュレートして受付に歩き寄った。
「はい、ようこそ。どうなされましたか」
所詮こいつらキャストって、機械が喋らせてるNPCなんだけど、ほんとに精巧だよね。
「ちょっと、頭が……」
「えっと、わたしが説明します」
「はい、どのように具合が悪いのでしょう?」
「えっと……【忍び寄る水死】」
息が、できないのだろう。
【忍び寄る水死:対象者の肺に直接海水を生じさせ、窒息させる。リスク:6面ダイス×1】
いや、いくらNPCが相手と言っても、意外とえげつない事するな、と何となく思った。
説明文にあった“リスク”については、後で言及するよ。どうせ、ゲームシステム的にも後払いのリスクだし。
とにかく、窒息の魔術は“必殺”の術なんだろうけど“即死”の術ではない。
つまりその本懐は、窒息死までのタイムリミットを突きつける事によるプレッシャーと、スタミナをじわじわ奪う事にあるのだろう。
やっぱ、意外とサドなんじゃない? このヒト。
しかも、一番タチの悪い天然モノ。
で、奇襲を即座に理解した受付のおねーさんは、カウンターに隠していた警棒を取り出し、ボクや
ねーちゃんは、ボクを庇いながら、受付の手首に自分の手首を交えさせ、器用に殴打を受け流す。
やっぱ、ファンタジーゲームの前衛経験者って、この手のリアル志向ゲームの格闘にも強いよね。
他の看護士二名も、すぐさま応戦しようとするけど、
「……【メンタル・クラッシュ】」
見た目には何の被害もないけど、
【メンタル・クラッシュ:対象者に6ポイントの精神ダメージを与える光弾。リスク:3面ダイス×1】
はい、問答無用で“閃き判定”に追い込まれる、光速の飛び道具だよ。
ボクが手にしていたスマホに、ニャルラトテップのサイコロが表示される。戦闘中、なかなか悠長に見てられないけど、
【閃き判定成功率:65】
てことは、この看護士AのINTは13か。
運命のダイスロールだ。
【看護士Aの閃き:75(失敗)】
失敗、ってことは、看護士Aは怖い考えにならなかった。
つまり、ボクらからみて発狂させる事に失敗した事になる。
看護士Aは一瞬怯んだけど、おぞましさを振りきるように、ナイフを振りかざして来た。
仕方がない、ボクも使うか。
【生体イタズラ:対象の五体のいずれかを変質させ、その部位の機能を事実上欠損・喪失させる。変質する部位はランダム。また、変質した本人に10面ダイス×1の精神ダメージ。目撃者全てに6面ダイス×1の精神ダメージ。リスク:6面ダイス×1】
看護士Aの胴体が、バキバキ破砕音を立てて伸びた。
よーし、“アタリ”の部位だね。
哀れなオンナは背骨を砕かれ、皮膚と肉を伸ばされる激痛と自分が自分でなくなる絶望にもがき狂い、死に損ないでピクピクしている虫ケラみたいになったよ。
きもちわるいから、さっさと死んでよ。
さて、この光景を見た“目撃者”と言うのは、仲間であるキャストどもと、ボクらパーティ全員だ。
で、ボクら側に関してはこれも後払い。
一方、見知った仲間を目の前で怪死させられた受付のおねーさんと看護士Bの二匹はただちに正気を削られる。
【受付への精神ダメージ:4】
【看護士Bへの精神ダメージ:6】
看護士Bが閃き判定だ。彼女のINTは10だから、成功率は50パーセント。まさしく五分五分。
【看護士Bの閃き:83(失敗)】
うーん、調子が悪いな。
けど、受付の呼吸はもう限界らしい。前のめりに倒れて、これまた虫ケラのようにもがいている。見苦しいね。
そして“状態異常”は免れたものの、看護士Bは一瞬の葛藤を見せた。
その一瞬が、命取り。
無事、お掃除は完了した。
魔術使用のツケを払った後、それで無事なら外科処置キットを盗んで立ち去ろう。
ボクらが殺ったって証拠?
無いよ。
魔術での殺人なんて法的にも立証出来ないし。
狂信者どもが魔術暴発させて狂い死にするなんて、日常茶飯事でしょ。
日頃の行いは、いざって時に信じてもらえるかどうかの分かれ目になるんだよ。
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