リプレイ04 銀の鍵のチケットブースを越えて、っての?(語り部:JUN)
はじめましてのヒトは、はじめまして。
VR世紀末ヒャッハーゲーム“カレント・アポカリプス”のプレイを見て下さったヒトは、お久しぶりです。
https://kakuyomu.jp/works/16817330650997620808
僕は
まあ、こんなゲームに引きこもってる事からわかるように、現実ドロップアウト組だけどね。
だって、国民の大半を機械で保持している時代、地方の医者ってそんなに人数必要ないもん。
医大での勉強は僕なりに真剣にやったけど、それを必要とされない現実に打ちのめされた、だとか、そんなセンチな話ではない。
リアルがクソゲーだったので、何となく降りた。以上。ってとこ。
まあ、とにかく。
素で外科処置と薬学のリアルスキルを持っている。それが、VRゲームでの僕の強みかな?
ファンタジー世界だと回復魔法の仕様次第な所はあるけど、大抵、錬金術師とかああいうジョブとの親和性は高い事が多い。
ゲームのタイトルにもよるけど、これらは【スキル】としてゲームから付与してもらえる場合も多い。
けど、当たり前だけど、タダなんて旨い話は無い。
大抵はスキルポイントだとかの代償を要求されるだろう。
このゲームにも【応急手当て】とかってスキルはあるんだけど、リアル医者の僕はそんなの取る必要が無い。
つまり、最低限度、
さしあたり【精神科医】のスキルはゲームから取得しておいた。重症な精神疾患を治すのには、正気度の減少量次第では「死んだほうがマシ」な程の時間が掛かるし、そもそも成否が運任せにはなるけど、仲間の正気度を回復させる貴重なスキルに違いはない。
僕にはカウンセラーやセラピーのリアルスキルは無いからね。これで、心身のどちらにダメージを負ってもリカバリーが可能だ。
ちなみに、このスキルを使うと、僕と患者、双方の口が勝手に動いて「カウンセリングしてますよ」って描写がされる。慣れるまでは、ちょっと気持ちが悪そうだ。
後は一応、魔術としての【ヒーリング】も習得しといたよ。
回復魔術とは言っても、切創だとか骨折だとか、まだ取り返しのつくダメージしか治せず、腕とかもげたりしたのは治せない。
それでも、道具無しで、身体の自然治癒より遥かに速く負傷を治せるのは大きい。
まあ、魔術の使用に、六面ダイスによる正気度チェックが伴うので、いとも簡単に閃き判定行きとなってしまう。これはあくまでも緊急用の切り札だ。
僕の
僕自身の性能はこんなとこかな?
他にもリアル知識を活かした戦術は考えてあるけど、試してみてのお楽しみってことで。
このラヴクラフトリゾートは、大きく二つのエリアで構成されている。
ラヴクラフトランドと、ラヴクラフトシーだ。
ラヴクラフトの名を冠した
モノレールから降りて、早速、鉱物だか有機物だか判然としない材質の門がたくさん並んでいた。
現実のテーマパークではチケットブースとされていた門だ。
ちなみに現実のそれでは、チケットブースの前に手荷物検査のゲートがあるんだけど、このゲームでは無用なものとしてオミットされているね。
やっぱ、僕ら以外にも
ベンチに座ったH・P・ラヴクラフトが、不定形の何者かに襲われていると言う銅像が、僕らを出迎えた。
まあ……自分の創作したキャラクターと触れ合ってると言う点では、元ネタのテーマパークと同じなんだろうけどさ。
僕らはダゴン秘密教団の陰謀を暴きに来たていだけど、別段、キャストに扮した教団員達が襲ってくるわけではない。
あくまでも、表向きは普通のテーマパークであり、僕らから何か悪さをしない限りは普通にアトラクションとかで遊べる。
彼らにも、大っぴらに人殺しをしない程度の節度はあるみたいだ。
もっとも、アトラクションに入ってしまうと話は別だけど。
ここのアトラクションはどれも、結構な割合で人が行方不明になるんだってさ。
まあ、VRMMOではよくあることだけど?
お土産屋さんが並ぶ、ガラス張りの屋根のアーカム・バザールを抜けると、遠くに何らかの金属的なような生体的なような“モノ”が絡み付いた立派な建物が見える。
ぶっちゃけ、こんなんばっかだよ。
外観のバランスが明らかにイビツで、素人目から見ても何で倒壊しないかが不思議でならない。
VRの物理演算で無理を利かせて“非ユークリッド幾何学”的な建造物ってのを再現したのだろう。
シンデレラ城ならぬ、ルルイエ
僕、今、うまい事言ったよね?
まあ、そんなのを目撃しても正気度ダメージが発生しないだけ、昔のクトゥルフTRPGよりは優しいのかもね。
もっとも、ランドのど真ん中にデカデカと鎮座したあれはイヤでも入園直後に目視する事になるから、それで発狂しちゃったらゲームバランス悪いのかも。
さて。
バザールを抜けて、外壁沿いに歩くと、割りとすぐ中央救護室があるはずだ。
ここで、ニャルラトテップとの交渉タイムだ。
「いあいあ、にゃるちゃん、にゃるちゃんよ、と。
救護室に外科処置キット一式がある事にしてほしいんだけど。それも、最高級の、高度管理医療機器セットがいい」
ふざけ半分に邪神を呼ぶ背徳感と言ったら、存外いいもんだよね。
最初のクエスト受注以降は別に呪文とかいらないんだけど。
で、あのペプシマンのなり損ないみたいなのっぺらぼうが出てきたんだけど。
【一般の応急処置キットならいざしらず、そこまでの品質のものをテーマパークに置くのは少々、ご都合主義では無いのかね】
「
【神秘の秘匿を優先するには、如何なる怪しい痕跡も残さない、とも考えられる】
「ダゴン秘密教団の信者なんて、おいそれと増やせるもんでもないでしょ。ある程度、死なないようには配慮されてるんじゃない?」
あー、思いのほかめんどくさい交渉になったな。
で、
【わかった。信者の中にも一定数、そう言う考えの者も居るかも知れない。“運命のダイス”で決めよう】
結局、サイコロ任せになっちゃったよ。
ちなみに昔のクトゥルフTRPGだと、この手の運試しをするにも、一人一人の“運のよさ”的なステータスで確率が上下していたけど、このゲームの運判定はいつ誰がやろうと一律50パーセントだ。
まさにリアルラックのみが問われるという事。
VRゲームの臨場感を出すためなんだろうね。
そんなわけで、ニャルラトテップが手品みたいに10面ダイスを二つーーつまり100ダイスを出現させて放り投げた。
ちなみに判定は要求される数値より低いと成功とされる。ちょっと、ややこしいんだけどね。
今の場合、50以下の数値が出れば成功ってわけだ。
はい、コロコロコロ……、
【32(成功)】
ぃよっし!
幸先いいね。
【中央救護室には、確かに最高級の医療キットが置いてある。
だが、それには気付かれずーー或いは目撃者を全て消した上でーー奪わねばならないだろう】
……なんかさ、やっぱりこのニャルラトテップ、僕には厳しくない?
成功したなら、即アイテムゲットでいいじゃんかよ。
たかが、応急処置の為の、どこにでもある道具なんだしさ。
差別だよ、差別!
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