夜が消えた日

空野宇夜

夜が消えた日

 目を覚ませばいつもの朝。カーテンが半開きになっていた窓から差し込む橙色の光に刺激され、俺は目を開いた。起き上がり、周りを見るも、あるのは見慣れた風景だけだった。何の変哲もない一日を俺に送れと言わんばかりの圧力をかけているようだった。


 だが、今日はそんなつまらない日ではない。今日は人々にとって夜が消えた日となるのだから。何故俺が知っているかって? そんなの決まっているだろう? 俺がこの世界の創造主たる神なのだからさ。


 さて、では早速オプションメニューを開いて行こうか。世界全体をこのメニューで思いのままにできる故に項目が多すぎていちいち探すのが面倒くさい。ま、そう言う時のために検索機能があるんだけどな!


 俺は検索欄に『昼夜サイクル』といれ、エンターキーを二度押した。

「さあさあ! やるぞやるぞやるぞ!」

ヒットした項目から『昼夜サイクル』を選び、それをオフラインと設定した。これほどあっさりと世界が変えられてしまうとはな。元いたあの世界の創造主もこんな気分だったのだろうか。


 それからは数十時間が経っても夜が訪れることはなかった。

 テレビはそのことで持ちきりだと思われたが例のあの局だけは平常運転だった。思わず俺も笑ってしまったよ。

 え? 何故夜が訪れないかって? それは簡単さ。地球の自転を1日から365日にしてやったのさ。

 俺は神だ。何でもできる。でも俺が神だと周知されても困るから正体は隠して普通の人間をやっている。ああそうだ。俺はシミュレーション仮説を立証させてやったのさ。


 さあ、やることやったことだし、一年後に跳んでみようか。さっきと同じようにオプションメニューから未来へ跳んだ。


 俺はある写真を見つけた。あれから一年経って地球がどうなっているかが分かる写真だ。地球軌道上の宇宙ステーションから撮影されたそうだ。辺り一面が真っ暗だ。何かが灯っている様子もない。

 これは……昼が消えた地域の写真か。懐中電灯で照らすところの全てが白く染まっている。

 一方夜の消えた地域はどうだ。何かが変わっている様子はないが……。いや、これは……? 俺はここで、ある国旗以外の国旗を見つけることができなかった。そう、世界の半分が統一されていたのだ。


 その時、勢いよく部屋のドアが開いた。ドタドタと何人もの警官が入ってくる。

「ようやく見つけたぞ、自称神め。お前を殺人の容疑で逮捕する」

どうやら、俺の好奇心は周りにバレていたらしい。

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