第17話謁見

「この度は、我が国民を救って頂き、誠に感謝に絶えません。」


獣人国第3皇子ムスタス・ラ・ドナキアは、恭しく膝を付き私に向かい頭を垂れる。


あ、尻尾フサフサだ。耳もピーンとなってる。ワシャワシャしたいなぁ。


「魔王様、お言葉を」


脳内でモフモフを想像してた私に、アランが耳打ちをする。

あ、ぼーっとしてたよ。ゴメンゴメン。


「我が国民も被害に会っていたところだ。貴国の子達も無事でなにより。これ以上被害が拡大する前に、対策を取らねばなるまい。」


「そうなのです。第二、第三の被害者が出ないように、策を立てなければなりません。そこで…」


言うなり、ムスタスは疾風の如く、牙を剥き出し、鋭い爪を出し私に襲いかかってきた。


次の瞬間、グハッという呻き声を出しムスタスは床に這いつくばった。

その首もとには、サイレスの斧とディーダの鞭、それに勇者の大剣があと少しで触れそうになっていた。


「ふむ。面白い事をするのだな、第3者皇子。」咄嗟に私の前に出たアランを引かす。


「貴様、やはり蛮族は蛮族か。恩を仇で返すとはな。」勇者が吐き捨てるように言う。


「ふっ。…………あははははははははははははははは!!!」


首もとに各々物騒な物を添えられた状態で、ムスタスは笑いだした。

どうした!?大丈夫か!?モフモフ!




「これは失礼。我が獣人族は弱き者の下にはつかん。そして強さばかりでも懐かん。瞬時に私に保護の魔法を掛けてくれたアビステイル王に下ろう。」


ん?なんて?下る?


「ふてぶてしいにも程がある。」

何故か鋭い眼差しで、ムスタスを見下ろし大剣を背中に仕舞う勇者。


「下るとはどういうことでしょうか?まさか獣人国が我が魔族国の属国にでもなるんでしょうか?」アランがブリザード級の声でムスタスを見据える。


「俺が魔族国に下る!…ま、俺はしがない第3皇子だから、獣人国全てを統べることは出来ない。だから俺が魔族国の属国民になる。」


「いやいやいやいやいやいや、いらんし。ってか困るし。ヤダし。めんどくさいし。」

「…魔王、思ったことがそのまま口に出てるぞ…」

あっ!思わず思考が口から出ちゃった。


「コホン…。ムスタス皇子、まずは自国に帰られ、よくよく考える事だ。これで謁見は終わる」


面倒事になる前に退散せねば。

私はいそいそと謁見室から出た。

その様子を目を三日月の様に曲げたムスタス皇子が見送っていた。

あー、怖い怖い。







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