第15話酒場にて。その②

「…ブレイブったらやっぱり本気なのね。」

「私達に話があるって宿屋で言った事ですか?騙されているんです!きっと!もしくは魅了の魔法でもかけられて…可哀想なブレイブ!」

「ん…でもそんな感じじゃないんじゃないか?なんかこう…いい雰囲気だったような…」


「「デンは黙ってて!!」」


酒場の奥のテーブルでミランダとマリアンヌが小声で話していた。


「あれは?前に王様に貰った指輪で魔力増幅して魅了の魔法をかき消すとか!」

「指輪はブレイブが持ってるから、こっそり奪ってくださいミランダ!」

「それは無理じゃないか?ブレイブからこっそり取るのは。」


「「デンは黙ってて!!」」


「たいした女じゃないのに、なんでブレイブはべったりなのよ!私の方が胸もあるし、腰だってくびれまくってるのにぃ!」

「ミランダの牛乳はともかく、あんな黒くてゴワゴワした髪で、ろくに手入れもしてない様子だし、私の絹の様なサラサラな金髪の方が触り心地もいいし」


「可愛い顔してたぞ?結構。」


「「デンは黙ってて!!」」


「……下品な格好と腹黒じゃ勝ち目はないと思うんだがなぁ。」


小さい小さい声でデンはため息混じりにこぼす。


「「何!?言いたいことがあるなら大きい声で言ってよ!!」」


やれやれとデンはエールに口をつけた。


「あんな笑顔、魅了の魔法だけじゃ見られないだろうが。」

またもや呟きは、女性二人には届かない。


「あれ?そういえばランバードは?」

「魔術師なら、呪いの類いにも詳しいでしょうしね。…あら、居ませんわね…」


最近単独行動が多くなった魔術師だが、いかんせん存在感が薄い。


普段は居ても居なくても支障はない。


「まーた、怪しげな魔法のスクロールでも漁ってるんじゃない?」

「使えないですわね!」


早く宿に帰る算段を考えながら、デンはエールを飲み干した。

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