第13話 宰相レジデント

「これは勇者殿、ようこそ。さあ中へ。おや?そちらの方は、……他国の高貴な方とお見受けするが?」


「突然の訪問、申し訳ない。私の正体は明かさない方がお互いの為。急ぎ貴殿に聞いて頂きたい事があり勇者と訪ねた。」


「そうでしたか。では中へ。」



一行は宰相レジデントの屋敷に来ていた。

(さすが宰相だな。私の正体に気づくとは。

先触れもなく、突然の訪問だったが追い返されることなく態度も柔軟。よい人材だ)


メイドがお茶を入れて、部屋から出ていったと同時に、勇者が口を開く。


「宰相殿、先程奴隷市場を壊滅してきた。」

「……報告は来たが、そなた達だったのか。」

「魔族の子供や、獣人族、人間も居た。この国では奴隷は禁止。なのに黙認していた責任は重い。」


(なんだか勇者怒ってるな。こんな顔を見るのは初めてだ。いつもは無表情だが、なんとなく感情が分かるようになってきたが。!!って別に気にしてるわけではないぞ!ほぼ毎日の様に来るからなんとなく見てるだけで、それ以外のなにものでもない!)


一人で脳内ワタワタしていたところに、勇者に話を振られた。


「こちらの方が、その現状を憂いて力を貸して下さった。」


「……我が国の子達も拐われていたのでな。見たところ、かなり前からあったようだな。あの市は。」


深いため息を吐き、レジデントがお茶を飲んだ。

「あの市場は、確かに以前からあり、存在を確認していた。が、顧客に貴族が大勢居てなかなか摘発にいたらなかった。というのは建前だ。」


「全ては現王になってからの事です!王の命で他国の子供を拐い、売り、一部の貴族に甘い汁を吸わせ自分の傀儡を作り出したのです!!」


いきなりドアがバアン!と開き、綺麗な女性が入ってきた。


「レジーナ!失礼だぞ!」


レジデントが制しようと立ち上がると、勇者の方を向き、


「勇者様!この国を救って下さい!このままではこの国は王の野望に飲まれてしまいます!」


「…俺達が踏み込む前に、王宮で見知った顔があった。財務官の男だ。」


(あー、あのひょろっとした男のことか。財務官ねぇ。)


そんな事を考えている間にも、彼女は父が止めるのを聞かず、勇者に延々と救国を説いている。


(なんだかムカムカしてきたな。)

「全てを勇者一人に委ねるのは、おかしいのではないか?貴女もこの国の一人であろう?なんでもかんでも勇者に頼むのは都合のいい話だな。貴女にも出来ることがあるだろう?」

気がつくとそんな事を言っていた。

あ、そんなに注目しないで…視線が怖い……


「そうですわね…。確かにわたくしにも出来ることがあるはずです。お恥ずかしい、取り乱しました。」


「レジーナ嬢は他の貴族の令嬢とは違う。良識がある。俺も出来ることはやるつもりだ。」


「勇者様…」


ムカムカ。


ん?


ムカムカ?


「で、どうします?国王を王座から引きずり落とすには、今回の件だけでは弱いですからね。あ、お茶のおかわり頂けますか?お茶受けも欲しいですね。」


寛ぎすぎだろアラン……


「………もう少し時間が欲しい。」


それ以降黙ってしまった宰相。レジーナは何かをブツブツ考え込んでいる。


「邪魔をした。」


そう勇者が言うと、私の方に手を差し出す。

ん?ああ、エスコートか。


勇者の手を取り、ソファーから立ち上がる。

すると左手をアランが握ってきた。


「ご馳走様でした。人間の中にも美味しいお茶を淹れられる者がいるのですね。」


二人と手を繋いだ状態で部屋を出る。

絵面的にどうなんだ?子供じゃないんだから、おかしいだろう!?


そんな私達をレジーナはほぅと頬を赤らめながら見ていた……。









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