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もう、以前のようには戻れない。


涙を全て拭き取り、鼻をすすっては、ゆっくり深く息をする。


私たちの関係は、終わったんだ。


そう結論に至ったが、認めたくない、諦めたくないと理想が胸を締め付ける。


そんな時に 空き教室の戸が開き、数名の黄色い声が聞こえてきた。


「キャハハッ! 弁償代を払えッつッて、金手渡しにくるとか、マジでウケんだけど!!」


驚いたアタシは、なぜかとっさに物陰に隠れてしまった。


「ね~! 元々壊れてた・・・・・・スマホなのにね・・・・・・・~!」


何の話だか分からなかったが、ふと疑問が頭に浮かんだ。


待って、さっきサラが出てきたのって━━。


「タイミング計ってぶつかって落としたら、私ら見てビビっちゃって。

あれマジでウケたんだけど!」


緊張が走る中、足音がこちらに向かってくる。


「アンタの言った通りだったね、“キク”」


うん・・そうだね・・・・


聞き覚えのある呼び名と、声に思考停止する。


「上手くいきすぎてやばいよね。

これで、しばらくはバイトしなくて済むし」


「いや~、良い小遣い稼ぎ・・・・・・・だわ」


「違う違う、お財布・・・ッ!」


高い笑い声が廊下を響かせ、耳に木霊する。


ちょっと待って、なんでキクちゃんが!? 嘘、どうして!? そんな事って、何か理由があるんじゃ、ありえない、でも、それじゃあ、サラは!? だとしたら、何かの間違い━━。


頭の中で考えれば考えるほど感情がさらに混乱し、やがて、アタシの中に何かが砕け落ちていった。


「スズ、ちゃん…!?」


ハッと我に返り、気付けば4人の女子生徒が私の前にいた。


その中には、青冷めたキクちゃんの姿も…。


「━━してよ」


「えッ?」


壊れかけている理性で、声を振り絞る。


「返してよッ!!」


アタシは、キクちゃんの腕を掴んで訴えた。


「返せッ!!」


衝動的すぎて語彙が乏しくなる。


アタシは、今どういう顔をしているのだろう。


親友、信頼と━━。


大切なものを多く失ったアタシを、 アンタ・・・にはどう見えているの?


「なんだよッ!? テメェ!!」


「キメェんだよッ!!」


他の3人が、アタシを力ずくでキクちゃんから引き離し、壁に突き飛ばした。


「あぐッ!!」


背中に鈍痛が走り、床に膝をついたとたん、アタシの中に何かが蠢いた。


鼓動と共に這い上がってくる“ソレ”は、アタシの中から怪音波を放出した。


4人は吹き飛び、窓は波動に耐えきれず、何枚も割れていく。


しまいには、火災報知器まで作動し、スプリンクラーで一帯が水浸しとなった。


「はッ、はッ、はッ━━」


アタシは、何が起きたのか、理解できなかった。


ただ分かるのは、四人が…、キクちゃんが…、目の前で倒れているという現実。


アタシが…、やったの…!?


「ひッ…」


後から恐怖が追い打ちをかけ、慌ててその場から逃げ出した。


それ以降、アタシは不登校となり、眠れなくなってしまったのだった。





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