忘れ去られた足跡

静かに靡く草木は囁き

滴る雫は緩やかに川になり

梢の小鳥は遠くを見つめ

死にゆくものは腐り

やがて流転へと還る


季節に流され繰り返し

落とす足跡も次第に薄れ

紅き枝葉は海鳴りと共に

思い出は引き波に乗せ

たなびく雲の隙間から

命の終わりが近づき

風に揺らめく湖畔に

滲んで光を落とす


半月が顔を現し

大地は陰の唄で震える

時の残酷さに心を痛め

冷たい水の上を歩いても

消しきれない寂寞に

今ある意味を問いかけても

遠くなっていく未来の幻影が

現実を霞へと誘い

半色と紅藤の狭間へ

思い出せずに流した飴色の雫は

幾重にも重なる波紋にさらわれる


これは、

忘れ去られたものたちへの、

追悼の詩。

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