絵の具

孤独の内に溜め込んだ空想の類を

どうしたってずっと言葉にできずに

幼さ故か、小さなこの両手から溢れてしまって

ついにはキャンバスを埋め尽くした


水平線から滲むようで

冷え切った頬を伝うような

暖かなその色が僕の声になっていく


想像が現実を凌駕して、重く垂れた雲が散った

その景色を遺せたならいいのにな

千年後の知らない誰かの目に

僕の声が突き刺さるような

鮮やかな色、それはきっと、まだ名前のない色


誰かと分け合うことすらできずに

心の奥底で今もくすぶっている

名前を持たないこの感情をなんと呼ぼうか


忘れないように

失くさないように


明日を憂いた春のようで

この身に走る脈のような

柔らかなその色で僕は僕になっていた


真っ白なキャンバスにぶつけた未来は

いつしか命になって、僕が生きた証になる

千年後の知らない誰かの生を

根底から覆すような、鮮やかな色

息を飲むほど美しくて

きっとそれは、僕だけの青だ

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