四
外に流れる東北自動車道の案内板には、宮城県の
私たちの車はその村田ジャンクションの左側を進み、山形道方面に入った。
そう言えば、笹谷峠には
そうして薄灰色の雲の下、村田ジャンクションから30分から40分ほど走ったところで、今度は左に大きく回るようにして山形ジャンクションから
その後は田んぼの中、
そのまま比較的栄えている地域を西に進むも、その内に人家も途絶え、山の
だが、しばらく我慢して進めば、左手の視界は
しかし、いつの間に晴れたのだろう。小森の奥に見える山の上には、移動中に雨に降られたことが嘘のような、雲一つない青空が広がっていた。
「おー、おー、よく来たね。早くお上がりよ」
鈴木と書かれた古びた表札。その近くにある後付けのチャイムを父が押そうとしたら、いつもの祖母が、いつものように出迎えてくれた。門も無ければ垣根も背が低い。恐らく、家の中から私たちを見つけてくれたのだろう。いつもの祖母ではあるが、その服装は五円玉のような結び付き抱き稲紋の描かれた黒紋付に
時刻は12時より少し前。納棺はまだのようで、家の中に入ると
「さあさ、顔を拝んでいって」
祖母と近所の住民たちに促されるまま、母が絹の
三角の
分かってはいても、ふと目を覚まして優しい声で語りかけてくれるのではないかと、つい期待してしまうのだ。
ふと足元に視線を移せば、彼女は私が思うよりも随分と小さくなってしまったものだと、そう思ったとき、抵抗もなく涙がこぼれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます