第7話(3)三将の反撃

「……」


「もらったぜ……」


「そうはさせんぞ!」


「!」


 横から槍が鋭く突かれるが、タイヘイがかろうじてこれをかわす。視線を向けてみると、そこにはシモツキがいた。シモツキが舌打ちする。


「ちっ! かわしたか!」


「へえ、もう復活しやがったのか……」


「呑気に休んではおられん!」


「そんなこと言わずに、もうちょっと休んでいたって良いんだぜ?」


「そういうわけにはいかん! 姫様の危機である!」


 シモツキがカンナとタイヘイの間にさっと割り込む。


「シ、シモツキ……」


「姫様、ご無事ですか⁉」


「な、なんとかですが……」


「それはなにより! 後は我にお任せを!」


 シモツキは槍を構え直す。タイヘイが笑う。


「はっ、さっきやられたってのに懲りねえやつだな……」


「タイヘイ、貴様の手の内はよく分かった! これ以上後れはとらん!」


「手の内って……これかよ?」


 タイヘイが両腕を尖らせる。シモツキが頷く。


「そうだ!」


「斬撃をかわせるのか?」


「来ると分かっていればな!」


「かわしたら後ろの姫様に当たっちまうぜ!」


「! ひ、卑怯な!」


「戦いに卑怯もなにもないだろうが……」


 タイヘイが首をすくめる。


「ならば! 先手必勝だ!」


「む!」


 シモツキが槍で突きを繰り出す。タイヘイがそれをなんとかかわすが、シモツキは間髪入れずに追撃をくわえる。


「それ! それ!」


「ちっ、なかなか鋭いな!」


「はっ!」


「くっ!」


 タイヘイがロケットブースターを噴出させて、空に舞い上がる。シモツキはそれを見てニヤリと笑い、呟く。


「狙い通り……」


「なにっ⁉」


「待っていたぞ……」


「はっ⁉」


 タイヘイの体にキサラギが飛びつき、羽交い締めにする。


「どうだ……」


「くっ! は、離せ!」


「そう言われて離す馬鹿はいないだろう……」


「くそっ!」


「ご自慢のロケットブースター……」


「なに?」


「見たところ、連続での使用は出来ないようだな……」


「むう!」


「その隙を突かせてもらう!」


「うおっ⁉」


 キサラギがタイヘイを羽交い締めにしたまま、空中で逆さまになり、声を上げる。


「喰らえ! 『飯綱落とし』!」


「⁉」


「はああっ!」


「‼」


 タイヘイを掴んだキサラギがきりもみ回転しながら地面に落下し、地面に激しく衝突する。土煙が舞う中、キサラギがすっと立ち上がる。シモツキが声をかける。


「……やったな」


「ああ、上に誘い込む攻撃……貴様にしてはなかなか上出来だった」


「……偉そうに言うな」


「なんだ? やるか?」


 シモツキとキサラギが睨み合う。カンナが声を上げる。


「二人とも!」


「ひ、姫様!」


「失礼しました……」


「キサラギ、まだですよ!」


「なっ⁉」


 カンナの言葉にキサラギが振り返る。土煙が治まったところで、ゆっくりと立ち上がるタイヘイの姿があった。タイヘイは呟く。


「さすがに焦ったぜ……」


「む、無傷だと……?」


「いやあ~額で着地したのが良かったぜ……」


 タイヘイが額をすりすりとさする。キサラギが愕然とする。


「い、石頭で地面をうち砕いたのか……?」


「そういうこった。さて、反撃といくか……」


「むう……」


「仕方がないねえ……」


「ん?」


 タイヘイが視線を向けると、そこにはヤヨイの姿があった。ヤヨイは左手に持った剣を振るって、タイヘイに襲い掛かる。


「うおおっ!」


「遅い!」


 タイヘイが腕を鎌にして剣を受け止める。ヤヨイが笑う。


「はっ! まんまと引っかかったね!」


「なんだと⁉」


「本命はこっちさ!」


「ぐおっ⁉」


 ヤヨイが右腕でパンチをタイヘイのみぞおちに喰らわせる。タイヘイがたまらず崩れ落ちる。


「どうだい⁉」


「なっ……」


「アタシは受けた衝撃を吸収して、返すことが出来るのさ。ご自慢の頭突きと同等の威力の攻撃はどうだい?」


「ぐっ……」


 タイヘイは立ち上がろうとする。


「へえ、なかなかタフだね……タフな男は嫌いじゃないよ」


「ヤヨイ、無駄口を利いている暇はありませんよ……」


「これはどうもすみません、カンナ姫……次で終わらせます……」


 ヤヨイが剣を構える。タイヘイが顔をしかめる。


「くっ……」


「急報! 急報! カンナ姫!」


 そこに馬に乗った兵が駆け付ける。カンナが尋ねる。


「何事ですか?」


「本国でクーデター発生です!」


「な、なんですって⁉」


 衝撃の知らせにカンナが驚く。

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