第6話(4)薙刀を振るう
「なっ、ひ、姫だと⁉」
「ええ」
「まあ、そう言われると確かにお姫さまって感じだな……」
「褒め言葉として素直に受け取っておきましょう」
「しかし、姫さまが自ら軍勢を引き連れてきたとは……」
「これは我が国にとってとても大事な戦ですので……」
「ほう……」
「ですから……」
「ん?」
「それを邪魔するあなたはここで倒させていただきます」
「む!」
カンナが馬に跨りながら、薙刀を構える。
「国の樹立に燃えているところに水を差すようで大変恐縮なのですが……ご退場願いましょう」
「そういうわけにはいかねえ」
「そういうわけにいくのです」
「……」
「………」
タイヘイとカンナが静かに睨み合う。
「はっ!」
「!」
「モリコ⁉」
「タイヘイ殿のお手を煩わせるまでもありません! ここは私にお任せを!」
負傷から回復したモリコが羽ばたき、強風を起こし、カンナを吹き飛ばそうとする。
「うああ!」
「カ、カンナ様!」
周囲の兵たちがモリコの起こした風によって吹き飛ばされる。
「『黒き翼のモリコ』……なかなか厄介な風ですね……」
カンナが馬にしがみつく。モリコが笑う。
「大好きなお馬さんから落としてあげるわ!」
「ぐっ……」
「これで終わりよ!」
モリコがさらに風を強める。
「はっ⁉」
カンナが馬から落ちそうになる。モリコがさらに笑う。
「はっ! 落ちた方が楽になるんじゃない⁉」
「……大将が落馬してしまっては全軍の士気に関わるので……」
「ま、まだ落ちてないの! しぶといわね!」
「貴女も大概しつこいですね……!」
「なっ!」
「はああっ!」
馬から落ちそうになったカンナが薙刀で地面を強くこすり、大きな炎を巻き上げる。その炎が、空を飛ぶモリコの方に飛び、モリコの体の一部を炎で包む。
「ぎああ!」
「モリコ!」
体勢を崩したモリコが地上に落下する。
「火の勢いが不十分でしたね……全身丸焦げを狙ったのですが……」
「な、なかなかエグいことをしやがるな……」
タイヘイが戸惑う。
「それも褒め言葉として受け取っておきましょう」
「ポ、ポジティブだな……」
「さて……」
カンナが馬に乗り直す。
「こ、今度はワタシが!」
「‼」
「パ、パイスー⁉」
「タイヘイの兄さんは控えていてください! この女はワタシが!」
パイスーが両手から出した糸がカンナの両手を巧みに絡み取る。
「むう!」
「それなら自慢の薙刀も使えないっしょ⁉」
「確かにそうですね……」
「む……」
「なにか?」
「妙に余裕ぶっているのが気に入らないね……」
「そもそも気に入られたいと思っていません……」
「はん! これで終わりだよ!」
「うおっ⁉」
パイスーが糸を振り上げ、カンナを馬から引き離し、地面に思い切り叩きつける。
「終わったかね……?」
「…………」
「! まだか! なっ⁉」
パイスーが驚く。カンナが口で横からくわえた薙刀を地面に突き立てて、地面への直撃を避けたのである。
「ふう……」
「ど、どんな芸当よ……」
「ふん!」
「はっ⁉」
カンナは器用に薙刀を扱って、手に絡んでいた糸を切断し、パイスーと向かい合う。
「それっ!」
「ごああ!」
カンナが薙刀を上下に振るうと、薙刀の先端から雷が飛び出し、パイスーの体の一部を貫いた。パイスーが崩れ落ちる。タイヘイが困惑する。
「こ、今度は雷だと……?」
「まだわたしがいるよ!」
「うおっと!」
「クトラ!」
全身トラックになったクトラがカンナに向かって飛び込んできたが、カンナがなんとか横に飛んでそれをかわす。カンナが呟く。
「こんなところでトラックに轢かれるのはまっぴらごめんです……」
「なに、遠慮しないでちょうだいよ!」
一度通り過ぎたクトラが素早くターンして、カンナの方にまた向かう。
「せいっ!」
カンナが馬に跨り、馬を走らせ、トラックに向かっていく。
「お馬さんでトラックに挑もうっての⁉ あまりにも命知らずだね!」
「ご心配なく。勝算はあります!」
カンナが薙刀をかざす。
「炎や雷での攻撃? 来ると分かってさえいれば、なんとでもなる!」
クトラがスピードを上げつつ、蛇行運転をする。カンナが呟く。
「なかなか狙いが定めにくいですね……」
「これで終わりよ!」
「それはこちらの台詞です!」
「⁉」
破裂音がしたかと思うと、クトラのタイヤが破裂し、車体のバランスを崩したクトラは派手に横転する。カンナがため息をつく。
「ふう……」
「発炎、発雷、そして、発破か……」
「! ほう、察しが良いですね……」
「さすがは姫さまだな。相手にとって不足はねえぜ……」
タイヘイとカンナが向かい合う。
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