第6話(2)三将との戦い
「そ、それのどこが詫びだというのだ!」
「なんという石頭……超人の類か?」
「まあ、なんでもいいさ……」
「む……」
キサラギたちを制し、ヤヨイが前に進み出る。
「こいつが親玉だってんなら、ここで始末するまでだ……」
ヤヨイが剣を構える。タイヘイが呟く。
「来るか……」
「すぐに終わらしてやるよ!」
「!」
ヤヨイがあっという間にタイヘイとの距離を詰め、剣を振り下ろす。タイヘイはなんとかそれをかわすが、地面がさらに粉々に砕ける。
「へえ、よくかわしたね!」
「そんな大振りがそうそう当たるかよ!」
「ならば!」
「うおっ!」
今度はやや細かい振りをしたが、これもタイヘイはかわす。
「はっ、良い反応だ!」
「音がすごいな! 結構な力じゃねえかよ!」
「当然さ、なんといってもアタシは『怪力のヤヨイ』だからね!」
「へえ、わりと……」
「わりと……なんだい?」
「そのままの二つ名だな。いまいち捻りがないというか……」
「! ケンカ売ってんのかい⁉」
「そう怒るなよ……おっと⁉」
タイヘイが穴の空いた地面に足をとられて体勢を崩す。
「もらったよ!」
「ちっ!」
「なっ!」
タイヘイの足裏が火を噴き、ヤヨイの攻撃を横に飛んでかわす。
「あぶねえ、あぶねえ!」
「な、なんだい、それは!?」
「ロケットブースターだよ!」
「がはっ!」
ロケットブースターによって急加速したタイヘイの頭突きをみぞおちに喰らって、ヤヨイは崩れ落ちる。
「一丁上がり!」
「ヤヨイが!」
「ロケットブースターだと……」
シモツキが驚き、キサラギが顎に手を当てる。
「人と機のハーフ、人機か⁉」
「ああ、そうかもしれんな……」
「ふん、おらあっ!」
「む⁉」
ロケットブースターで上昇したタイヘイが両手に抱えた土塊を次々と投げつける。
「これでも喰らいやがれ!」
「ちっ、ちょこざいな真似を……」
キサラギが舌打ちする。
「ここは任せろ、キサラギ……」
「む?」
「それっ!」
シモツキが槍を構え、タイヘイに向かって投げつける。鋭く飛んだ槍はタイヘイの膝に突き刺さる。タイヘイがバランスを崩す。
「むう⁉」
「この『剛腕のシモツキ』を舐めてもらっては困るな……それくらいの距離ならば、我が槍は十分に届く……」
「ふ、ふん……」
「ん?」
「剛腕でもノーコンじゃ意味ないぜ? 心臓か頭を狙わねえとな……」
「言われなくても……! 槍をよこせ!」
「はっ!」
シモツキが近くの兵から槍を受け取る。タイヘイは苦しそうに膝を抑える。
「ちっ、油断しちまった……」
「飛んでいるのもやっとだろう……これで仕留める!」
「甘えよ!」
「なにっ⁉」
シモツキの投じた槍をタイヘイが両手から放った斬撃で斬る。
「ふ、ふん……」
「りょ、両手が鋭く尖った……?」
「隙有り!」
「ぐはっ⁉」
タイヘイが続け様に放った斬撃を喰らい、シモツキが倒れる。
「二丁上がり!」
「両手から斬撃……かまいたちの斬撃か?」
「へえ、なかなか察しがいいねえ……くっ!」
地面に着地したタイヘイがキサラギの呟きに応えながら、膝に刺さった槍を引き抜く。
「どういうことだ? 妖の力も有しているということか?」
キサラギが首を捻る。
「そういうことだよ」
「そんなことが……」
「あり得るんだよな、これが」
タイヘイが笑みを浮かべる。
「ふむ……」
「降参するなら今の内だぜ?」
「冗談も休み休み言え!」
「うおっと!」
飛び込んできたキサラギに対し、タイヘイが斬撃をいくつか飛ばすが、キサラギはそれをことごとくかわしてみせる。
「ふっ……」
「なっ! あ、当たらねえ!」
「この『烈脚のキサラギ』の脚をあまり見くびるなよ! その程度の斬撃ならば、避けることなど実に容易い!」
「ちっ⁉」
「もらった!」
キサラギがタイヘイの懐に入り込み、心臓に向けて苦無を突き立てる。
「うおおっ!」
「ごはっ⁉」
タイヘイの大きく膨らんだ腕がキサラギの横腹を襲った。キサラギは吹っ飛ぶ。
「……正確に心臓を狙ってきてくれて助かったぜ……半分あてずっぽうで腕を振ったら、タイミングドンピシャでカウンターが決まった……」
タイヘイがほっと胸をなでおろす。
「さ、三将が倒されたぞ!」
「そ、そんなことが……」
「ど、どうすれば⁉」
「落ち着きなさい……」
「‼」
見事な馬体の青鹿毛の馬に跨った鎧姿の美しく凛々しい女性が、綺麗で長い黒髪をなびかせながらその場に現れた。
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