第4話(4)暴走のクトラ

「う……」


「トップ!」


「ケイ……」


「目が覚めたんですね……」


「セダン……」


「良かった……」


「バン……」


 軽自動車とセダン型の車とバン型の車のそれぞれの代表者が目覚めたクトラを見てホッとその胸をなでおろす。


「あ、あんたたち……わたしは確か」


「タイヘイ殿の強烈な頭突きと正面衝突したのよ」


 モリコがクトラに告げる。


「そ、そうだったの……確かにちょっと痛いわね」


 クトラが自らの頭を抑える。


「ロケットブースターの加速付きの頭突きを喰らってちょっとで済む?」


 モリコが呆れ気味に首をすくめる。


「頑丈さには多少だけど自信があるのよ」


「かといって、限度ってものがあるでしょ……」


「ふふっ……」


 クトラが笑いながら半身を起こす。


「へえ、もう起きれるのか? なかなかタフだねえ」


 パイスーが目を丸くする。


「こんなところで寝転がってもいられないでしょう。それにしても、あなた……」


 クトラがタイヘイに視線を向ける。


「ん? 俺か?」


「他に誰がいるのよ……ちょっと確認させてもらえる?」


「確認?」


「ええ」


「? ああ、いいぞ」


「えっと、その怪力が……」


「ゴリラ由来の怪力だ」


 タイヘイが右腕で力こぶを作ってみせる。


「それが獣の分ね……」


「そうだ」


「斬撃を飛ばしていたのは……」


「かまいたち由来の斬撃だ」


 タイヘイが両手を交差させる。


「それが妖の分ってわけね……」


「そういうことになるな」


「それで空中を飛行出来るのは……」


「ロケットブースターによるものだ」


 タイヘイが足裏を見せる。


「それで頭が……」


「石頭だな、超人由来の」


 タイヘイが自らの頭をナデナデと撫でまわしてみせる。


「どんな超人よ?」


「さあな」


「さあなって……」


「そういうもんなんだから仕方がないだろう」


「そういうもん……」


「ああ、そういうもんだ」


「えっと……」


 クトラが頭を抑える。タイヘイが尋ねる。


「どうした?」


「いや、ちょっと頭の中を整理しているの……」


「整理?」


「ええ、つまりあなたは……体や腕がゴリラで」


「うん」


「手足がかまいたちで」


「ああ」


「足裏にはロケットブースターが付いていて」


「うむ」


「超のつく石頭だと」


「そうだ」


「なんでもありね……」


 クトラが思わず苦笑を浮かべる。モリコが深々と頷く。


「それについてはまったくの同意だわ」


「ん……」


 クトラが立ち上がろうとする。


「ト、トップ、無理しないでください!」


「大丈夫よ」


 クトラがケイに応える。


「トップ、頭を打ったのですからもう少し安静にした方が……」


「こんなの修理をすれば平気よ」


 セダンの言葉にクトラは笑みを浮かべる。


「トップ、無理はしないで下さい……」


「心配性ね」


 クトラはバンの肩をポンポンと叩く。


「そいつらの言う通り、無理はしない方が賢明だぜ?」


 タイヘイが語りかける。


「ふっ……」


「なにがおかしいんだよ?」


「散々打ちのめされて、体の心配までされるとは……わたしたちの完敗かしらね」


 クトラが苦笑を浮かべながら呟く。


「うん、まあ結構手ごわかったぜ」


 タイヘイが腕を組んで頷く。


「ちょ、調子に乗るなよ!」


「そ、そうだ、まだ勝負はこれからだ!」


「決着はついていないぞ!」


「……やめなさい」


「‼」


 クトラが低い声色で呟くと、ケイたちは一斉に気を付けの姿勢になる。


「繰り返しになるけどわたしたちの完全なる負けよ……なにか欲しいものでもある?」


「そうだな……クトラ、俺の仲間になれ」


「仲間?」


「ああ、トップのクトラが仲間になってくれれば、この辺の連中が皆、俺に協力してくれるようになるんだろう?」


「代わりにあなたが新たにトップに立つってこと?」


「レジスタッフだかネジスタンプだか、そういうまわりくどいことをするつもりはねえ」


「じゃあ、何をするつもりなの……?」


「俺はこの四国という島に、もう一つ国を造る。はみだし者たちの国をな」


「⁉」


「どうだ?」


「レジスタンス活動の枠を超えて。国造り……? なかなか面白そうじゃないの……この『暴走のクトラ』、タイヘイちゃんに喜んで協力させてもらうわ」


 クトラが跪き、三つ指をついてタイヘイに頭を下げる。ケイたちが驚く。


「へっ、決まりだな」


 タイヘイが満足気な笑みを浮かべる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る