モフモフ野郎と俺の朝ごはん

水野 七緒

プロローグ

プロローグ

 その昔、俺は「神様の子」と呼ばれていた。


 といっても、もちろん本物の「神様の子ども」というわけじゃない。

 よくある「成績優秀」「スポーツ万能」な「非の打ち所のない子ども」的な? そう、いわゆる「神童」ってやつだ。

 でも、そんなの田舎だとよくある話で、ちょっと優秀な子どもは、すぐに親戚や近所の人たちがちやほやしてくれる。ちなみに、俺の黄金期は中学3年生まで。うちの母校、1学年2クラスだったからさ、そんな狭い世界でもてはやされていた、ただそれだけの話。

 で、たぶんだけど、多くの「神童」たちは歳を重ねていくうちに悟るんだ。

 ああ、俺って実は平凡な人間だった、井の中の蛙だったんだな──って。

 だってほら、いちおうそれなりに賢いからさ、世間を知るたびに気づくんだ。自分の「限界」に。「俺はここまでの人間だ」「ここから先には行けないんだ」って。

 ちなみに、俺がそのことに気づいたのは16歳のとき。これ、けっこう早いよな? 高校生なんて、世間では「多感なお年頃」とか言われてるじゃん。

 そんな時期に自分の限界を突き付けられるのは、わりと、まあけっこうキツい。特に俺の場合、生まれながらにしてぶっちぎりの才能を与えられた、本物の「神童」に出会っちまったのがキッカケだったからさ。

 当時は、本当に辛かった。

 辛くて悩んで、うらやんで、葛藤して──結局「あいつ」を受け入れるのに1年以上かかっちまった。

 でも、受け入れられただけ、まだマシなんだ。だって、最後まで割り切れずに、あいつを憎んで壊れちまったやつもいたくらいだし。


 と、まあ、冒頭からダラダラ語っちまったわけだけど。

 ここで、ふたつほど言わせてくれ。


 ひとつめ。

 その本物の「神童」と俺は、現在わけあって同居している。

 そして、ふたつめ。

 その「神童」は、マジで「神様の子」だった。


 そう、あいつ、人間じゃなかったんだよ!

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