第11話 ようやくわかったこと
僕は今日の休暇で、パウラお嬢様のいた孤児院を訪ねて事情を聞こうと思って、朝早くから支度して孤児院へと向かった。
ご先祖様はコウモリか犬か霧になり、移動したり侵入したりしていたらしいが、子孫で血も薄れてきている僕はそんな事をしたら、数日元に戻れなくなるので、普通に乗り合い馬車で向かった。
途中でお婆さんやお爺さんのご夫婦の乗車の手伝いをしてあげた。
「あらとても紳士で綺麗な顔の子供ね…。うちの孫娘の婿にどうかしら?」
「ごめんなさい…。僕はまだ子供ですので…」
とやんわり断り目的地へと向かう。
とある街に到着して、街の人に声をかけて、やっとその孤児院に辿り着いた。
見かけだけなら普通の孤児院である。サークス孤児院という名であり、院長先生を尋ねたら、とても親切そうな良い感じの子供が出てきて、応接間に通してお菓子を勧められた。
随分と気前がいいな。
すると奥から子供が顔を出した。茶髪の男の子だった。さしずめ、ここのリーダー格かな?
「…なんだお前…捨てられたのか?それにしちゃ身なりもいいし…売り物か?」
と同い年くらいの、その男の子が側に寄ってきて、ジッと僕を見た。何か変な言葉が聞こえたが気のせいかな?
「いえ…こちらの院長先生から、お話を聞きたくてやって参りました。カッレラ侯爵家に仕えている者でございます」
と言うと
「ふーん…客ってわけか。わかった。待ってな!」
と男の子が駆けて行った数分後に、案内の丁寧そうな子供が入れ替わりに入ってきた。僕よりも上の、背が高く頭が丸刈りの、ヒョロッとした男の子が院長室まで案内してくれた。
院長先生は丸刈りの子に、チップを与えて頭を下げて引き下がる。
「どうも…。カクライン院長先生。僕はこちらで育った、パウラお嬢様の執事の、ヴァレンティン・クリスティアン・ヘドマンと言います」
と言うと
「ほう、あの、パウラの。何の用でしょう?あの子は元気ですか?」
と院長先生はにこやかに言う。
「パウラお嬢様は、こちらでは、どういった方でしたか?
お嬢様は現在お部屋に引き篭もられています」
と尋ねると院長は少し強めに形の付いた指輪の痕を隠した。
「……少し変わった子でしたな。ここにきた頃から片目で…両親から酷い虐待を受けていたようですな…可哀想な子で、周りとも馴染めなくて孤立することが多くなりました」
院長先生は紅茶を用意してカップに注ぐ。
「ご両親のことは残念ですが、今の旦那様と奥様には気を許していますよね」
紅茶の入ったカップが僕の前に置かれた。
「…そうですな…。カッレラ侯爵様がお見えになり、顔合わせして帰った後、
『あの人達良い人だ…』と言っておりましたね。あの子にしては珍しい反応だったのを覚えています」
僕は出された紅茶を飲んだ。
「他に何か知っていることは?」
「ふむ…。そう言えば、子供達の一人から…今はもう里親に貰われましたが…その子が気味悪がり、私に報告に来たのです。なんでも
パウラは……人の考えてることがわかるんだそうで…」
との院長先生の言葉に今までの事が頭をよぎった。
何故、僕の正体を見破ったのかが、ようやくわかった。
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