第10話 正体を知る令嬢(パウラ)

そのうちに近所の人が気付いて、孤児院に連絡が行き、私は引き取られた。

そこでも皆の心の声が、ひっきりなしに聞こえた。友達になろうと言った女の子に相談して、心の声が聞こえることを言って、その子の心を言ってみると


「パウラちゃん…気持ち悪い!!」

と言って引かれて離れて行った。

院長先生はお金に汚かった。にこにこと優しそうな顔をしているが、心の中はどす黒く到底見れたものではない。裏でかなり悪どい事をしていた。


数年経ち、少し大きくなった私は完全に自覚した。この力は…隠さないといけない。でも心の声は勝手に聞こえてくる。


そんなある時、孤児の一人の里親が見つかり、引き取られることになった。里親は大変優しそうな顔をして、その子と数週間、交流を続けていた。

しかし…彼等の正体が実は奴隷商人で、院長と取引をしていることを私は知っている。


「ギーヴくん…行かない方がいいよ…あの里親のところ」

と教えてあげると、ギーヴ君は激昂して私を叩いた!


「お前、何なんだよ!あんな優しそうな人達が俺をもらってくれるからって、羨ましいんだろ!けっ!お前なんか一生ここから出るな!」

と散々いびられてしまい、私は心を閉ざした。

もう…誰にも助言しない。良い人であろうがなかろうが…。


そして私にも里親候補がやってきた。

心の中を見て、まともに私を哀れんでいるようだ。この頃の私は酷い有様だった。

人を信じず、子供達からも距離を置いた。

孤立して寂しそうな姿が侯爵様の目に留まったのだろう。


ざまあみろ。私は侯爵家の養女になるんだ!

そして連れてこられたのが、カッレラ侯爵家だ。

旦那様と奥様は本当に私の目の傷を心配してくれた。

心の中も綺麗だから安心できた。

ここなら安全に暮らしていけるかもしれないと思った。


しかし娘たちはダメだ。プライドが高く、私を自分たちの引き立て役にしようと考えている。私のことを心の中で何度も


『このブスが!ブスはブスらしく美しいものを際立たせなさい』


『醜い傷!きっとあれじゃ、嫁の貰い手はないわね!孤児だし仕方ないわね』

と聞こえた。私はこの二人の義姉が大嫌いになった。使用人たちも姉と私を見比べる者が多く、私はいつもどう見られているかわかり部屋に引き篭もった。従者を付けるのも断った。


そうしたらお義父さまが、新しい私付きの従者を雇い、紹介された。かなりの容姿だった。上二人の姉も使用人たちもメロメロになっているが…私は見抜いた。


心の中を覗き、その正体を知る。


ヴァンパイアの子孫!?

恐ろしい!と思っていたら


『害はないよ……』

とこの化物の心の声が聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る