第2話

 今年の冬は寒く、雪便りに列島が、泣き笑い。


 僕の胸の中に、木枯らしは、吹きやまない。

 聞こえてくる、あれは風の音?

 いいえ、あれは泣き声。

 求める姿が見つからず、泣く僕の心。


 身体だけでも、温かく過ごそうと考えた寒がりの僕。

 新しくダウンジャケットを買おうと決めた。

 暖かいダウンジャケット。

 どこかに、売っていませんか?

 身体と心を温めるダウンジャケット。


 通勤途中のシャッター通りの商店街。

 新しく洋服屋オープン。

 小さなお店の、

 大きなガラス窓。

 ウィンドウショッピングの人影。

 人影?

 覗き込んでいるのは、鹿が3頭。

 この街では、よくあること。

 驚きはしない。

 飾ってあるのは、緑色のダウンジャケット。

 ジャケットに、呼ばれている気がして、

 気づけば、お店に入ろうとドアを開く僕がいた。

 ドアノブには、直売所の札がかかっている。

 野菜でも一緒に売っているのだろうか?


 ダウンジャケットには、値札が。

 書かれていたのは、


『天使のダウンジャケット、使える方に』


 何の事だか分からない。


 洋服屋の店員さんは、サラサラ髪。

 値段を訊くことを、気後れするほど。

 天使の様な…美人だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る