【超短編】最善のファーストコンタクト

茄子色ミヤビ

【超短編】最善のファーストコンタクト

「まいったなぁ…」

 地球を観察し始めてどのくらい経過しただろうか?外交担当の私の下に今も補佐官から次々に情報が入ってくるが…地球人とどのようなファーストコンタクトすれば良いのか決めあぐねているのだ。

 彼らの思考速度が我々の百分の一程度なことはや、四次元以上を認識出来ないという点はまだよい。


 なら何が問題か?

 

 それは宇宙がこの段階に来ているというのに、未だに彼らは我々のような上位の生命体とコンタクトをとった記録がないのだ。

 地球の全生命をスキャンしてみたところ、地球人の2%は外星人であり、現地の人間と何かしらの契約を結んでいるようだが…彼らは上位生命体とは言い難い。

 随分と我が物顔で地球を歩き、地球人を下に見ているようだが、彼ら如きは我々が見放したハグレ者なのだ。

 我々としては彼らと違い対等で友好な関係を築きたいと思っている。

 というのも彼らは今まで上位生命体との接触もなしに、ここまで成熟した尊敬すべき生命体なのだ。

 だからこそ、その初めての接し方に悩んでいるというわけだ。

 彼らがもっと未熟であればこんなに考えこむことはなかったのだが。

 しかしあまり時間がない。

 早く未来の友人たちを保護してやらねばヤツラが来てしまう。

 惑星を資源としてしか考えていない者が近くまで来ているからだ。

「あくまで提案なのですが…」

 私が最も信頼する補佐官の1人が、辺境惑星の資料をいくつか飛ばしてきたのでそれを触手で受け取り読み取る。

「なるほど…」

「はい。惑星を統治するほどの生命体は、ある程度の文明に達すると現実では起こりえないような『妄想』をします。自分たちの経験からの未来予測ではなく、個人や集団の無意識下の願望や危機感を『物語』として昇華させ、それを俯瞰することによってある種のストレス解消をしているようです」

「ふむ…」

「そして、その『物語』と同じことが現実に起きると、その『物語』を信仰信奉していた集団の長が惑星の代表になり、以降スムーズなコミュニケーションがとれたようです」

「…そうか!よし!地球人が製作した『宇宙人に関する物語』の全資料をまとめろ!それを参考に地球人が望む最善のファーストコンタクトとしようじゃないか!」

「承知いたしました」


 そして次の日。


 出来るだけ威力を絞ったレーザーを大陸に撃ち込み、ワレワレは地球に戦争を仕掛けた。


 宇宙人からそんなに侵略されたいのか?と疑問にも思った連中も多かったが、彼らが望んでいたのだから仕方がない。

 さらに乗組員全員をおよそ文化的な姿とは思えない異形の姿に調整し、ぬらぬらとした体液が出る体質したが「これで地球人と友好な関係が結べるのなら」と皆は同意してくれた。さぁそろそろ地球に降下だ。ワレワレは胸を高鳴らせ大気圏へと突入にした。

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