山の陰に暮らす

11月22日 パイカカレーと、バナナッツケーキ、抹茶ラテ

　昼過ぎからぼんやりと出掛ける。

　山陰には珍しく、雲一つない青空。帰りのことを考えて上着を着てきたが、うっすらと汗ばむほどの温かさである。先日の初雪は何だったのか。

　駅ビルと郵便局に立ち寄って、映画館へ。

　映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観てきた。

　前評判がやたらとインターネット上に流れてくるもので、フラットに観るというわけには行かなかったが、大変満足度の高い映画だった。

　いわゆる因習村を舞台に、戦争帰りのサラリーマン水木と、まだ人間の姿をしている鬼太郎の父が謎を探る物語。日曜朝から流しているアニメ版がベースということで、出来事はおぞましいが、陰惨な印象は抑えられ、バトルシーンも迫力がある。多少残酷な場面はあるが、子供でも見られるし大人も楽しめるエンタメ映画に仕上がっている。

　主役二人のキャラクターデザインが、ビジュアルも設定もかなり良い。ざんばら髪に着流しの男というのはどうしてこうもセクシーなのか。野心に生かされているような昭和の男も、最近では珍しい存在である。

　予告で期待した通りのものが出てくる、というところで、特典も含めて本当に満足だった。観たあとに市川崑の『犬神家の一族』を改めて観たくなってしまったところもあるが。

　映画館を出ると、良い時間なので夕飯を食べることにする。当初目を付けていた店は、ランチで売り切れた為にディナー営業は中止とのことだった。島根はいつもこうである。歯ぎしり。

　映画館周辺は駅前なのだが、ランチはまだしも、一人でさっくり食べられるような飲食店が本当に少ない。結構な空腹だったので、何度も行っているカレー屋へ行く。

　店の雰囲気が若干変わっていて、スイーツの入った冷蔵ケースが入り口に置かれるようになっていた。まんまとひっかかって、カレーとケーキを注文する。

　カレーはトロトロに煮込んだ豚軟骨が入った「パイカカレー」。とろみがほとんど無くシャバシャバのルゥに、コロコロとたっぷりのパイカが嬉しい。そのぷるりとしたコラーゲンと、肉の旨味がスパイシーなルゥと溶け合う素晴らしいカレーである。何度食べても、大変美味しい。

　食後には、バナナッツケーキとホットコーヒーを。カレーの後にはコーヒーがよく合うのだ。口の中をさっぱりとしてくれるし、香りも良い。

　バナナッツケーキはその名の通り、バナナがしっかりと練りこまれ、クルミが散らされたパウンドケーキである。風味豊かで、バナナ以外の甘さは控えめ、しっとりと香ばしいキャラメル風味なのが嬉しい。

　カレー屋でそこそこゆっくりしたが、予約したレイトショーまではまだ時間がある。もう一軒、気になっていた夜カフェに立ち寄ってみた。

　いわゆる古民家カフェで、入り口はほとんど家の玄関そのままなので、入るには少し勇気が要る。潜り戸をそっと開けると、ざっくばらんな店主に迎えられた。靴を脱いで上がっていく。

　小さいがよく整えられた日本庭園が奥に開けていた。その窓際に陣取ってみる。夜の庭は紅葉もしとやかである。客は私ひとり。クラシックのピアノ曲がBGMで、大変落ち着く。

　そうして抹茶ラテを飲みながら、この日記を書いているというわけである。

　そういえば今日は「いい夫婦の日」というやつなのだが、今朝の夫はいつもよりも早出で、私はこの後もう一本レイトショーを観る予定なので、本日中に我々が顔を合わせるのは僅かな時間になりそうである。いやはや。