九月
9月1日 夏苺と紅茶のかき氷、シャインマスカットと金木犀のパフェ
目覚めた時から全身が重く、普段ならばうずくまって過ごす体調だったのだが。
今日は病院へ行かねばならない。予約をしてあるので。
のろのろと身支度をして外へ出れば、ひどい蒸し暑さ。熱中症日和である。生ぬるい雨まで降ってきた。しかし雨脚はさほど強くない。後に買い物をすることを考えて、やはり自転車で行くことにする。
病院に着いた時には、雨と汗が混ざり合ってそれはもうひどい有り様になっていた。病院が綺麗で涼しいのが幸いである。
定期的なものなので診察はすんなりと終わり、いつも通りならばランチでも食べて帰るところである。しかしどうも食欲は無い。炭水化物や油は入らない感じである。
それならばと、食べておきたかったかき氷を食べに行く。
松江城にほど近い、紅茶専門店『パンジェンシー』。こちらでは夏季限定で、自家製の紅茶シロップを使ったかき氷を出しているのだ。
昨年こちらで食べた「ピーチティームースのかき氷」がはちゃめちゃに美味しかったのだ。今のところ、私が山陰で食べた美味しいものランキングでトップスリーには確実に入る。今年も是非食べねば、と思っていたのだ。
しかしなんと、今年は新作のかき氷がメニューに増えたという。島根県
アンティーク調の落ち着いた雰囲気の店内で待つことしばし。現れたかき氷の美しいこと。
紅茶シロップがたっぷりとかけられて赤茶色に染まった氷の上には、こんもりと夏苺のムース、トップには深い赤色の夏苺のコンフィチュール。うっとりと眺めながら、一口。やはり美味しい。甘さ控えめで香り豊かな紅茶シロップに、ふわふわの甘酸っぱい夏苺ムースが素晴らしい。氷は柔らかく削られ、ムースの温度が低すぎないのもあって、少しも頭が痛くなることはない。コンフィチュールもすくってみると、本来酸味の強い夏苺がとろりと甘く煮られて奥深い濃厚な味わい。紅茶にジャムを合せたくなる気持ちがよくわかる。
このかき氷は本当に、食べ終えるのが惜しくなる。ひんやりと美味しいものを食べて、水分も補給して、少し気力が回復した。
とはいえ、やはりがっつりしたものを食べる気にはなれない。ついでなので、もう一つ気になっていた冷菓を食べることにする。
松江市役所近くに今年できたばかりの、ソフトクリーム店である。これもまた、私の愛する木次乳業の牛乳を使っているというので、食べておきたかったのだ。
普通のソフトクリームを食べる気でいたのだが、店の前まで行って、目を引かれたメニューを注文してしまった。「シャインマスカットと金木犀のパフェ」である。
いったいどんな組み合わせになるのか。小さいけれど温かみのあるイートインスペースでわくわくと待つ。
パフェの顔はもちろん、ソフトクリーム。その表面はまるで新雪のようにきめ細やかな白。それをつやつやと飾るのがシャインマスカット、それからライムとディルの緑。みずみずしさに爽やかな香りが加わる。ソフトクリームはしっかりとミルク感があり美味しいのだがやや固めで、個人的にはもう少しなめらかな方が好みである。ソフトクリームの下にはとろりと洋梨のピューレと、杏仁豆腐。これもそれぞれ香りが立っていて、仄かに秋の気配がする。更にスプーンを進めると、米粉のシフォンと生クリームがふんわりと舌をリセットしてくれ、最後に現れるのが金木犀のジュレと、再びのシャインマスカット。最後にもうひと押ししてくれる、このひと粒がにくい。そして金木犀のジュレの芳しさ。鼻を抜けていく金木犀が、頭の中にちいさな花を咲かせていく。決して香水のような強さは無く、舌にも仄かに甘い。
そう、これは夏の終わりから秋に移り変わって行くパフェなのだ。見事な構成に感嘆する。実に良いパフェだった。
そこからまた、えっちらおっちらと自転車を漕いで買い物をして帰った。全く褒められたものではないけれど、今の私はひんやりと甘いものだけで動いているのだと思うと、少し楽しくなってしまってペダルも軽く感じた。
そして現在、日頃の運動不足がたたって尋常ではない筋肉痛に苛まれている。なんともはや。
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