4月3日 大人のミロ

 昨日よりも体がつらい。わりと駄目。

 どれくらい駄目かというと、栄養補給にドリンク剤を飲もうとしたのだが、その蓋を開ける力が無かったくらいである。蓋は滑り止めやら何やらを使ってどうにか開いた。


 昨日は家に夫がいたので、あらゆる面で甘えさせてもらった。弱っているときは特に、そのありがたさをしみじみ感じる。こちらの余裕が無いときにじゃれつかれるのは、流石にしんどいのだけれども。


 我が夫には残念ながら、料理を任せることはできない。結婚生活初期に何度か頼んだことはあるのだが、なんとも言えぬものが食卓に並んだもので、「うん、家の料理は、私がやります」となったのである。

 いわゆるメシマズ、とまでは行かない。ただ、申し訳無いが、美味しくはない。レシピを見ながら作っているはずなのに、なんとなくでサラダ油をごま油に変えたりするし、火入れが微妙だったりする。スーパーで豚コマと豚バラの区別が未だにつかない人でもある。「なんでこうなっちゃったかな」と考えながら食べるのは、悲しい。それならば私が全部引き受けて、無理なときは外注した方が、私の精神が安定するのだった。


 そんなわけでまた、仕事帰りの夫に「ほっかほっか亭」で買ってきてもらった。今夜は回鍋肉丼。ごはん小盛りで。ぼんやりしていても、おかずとごはんを雑に口内調味できる丼物は良い。普通に美味しかった。


 この辺りは美味しい惣菜が買えるところも本当に少なく、あっても割高になってしまうので、つい弁当屋頼りになってしまう。島根県唯一のデパート「一畑百貨店」のショボさについてはまた別に語ることになるだろう。とりあえずあれは、私の中で「デパ地下」と呼べるものではない。

 田舎の方が物価が安い、などというのは大嘘である。野菜や魚など地のものに関しては安いが、それ以外はむしろ都会より高い。考えてみれば、都会は店舗間の競争があるので値引き率が高くなるし、量や質で差別化もされる。輸送が不便な地域はその費用が上乗せされる。当然の話である。

 価格も味も全国で変わらないチェーン店はこういう地方こそありがたいのかもしれない。私の愛する松屋はいつ山陰に出店してくれるのだろうか。もうスタバもあるのだが。


 風呂上がり、ベッドに入る前によく飲むものがある。「ミロ」である。

 幼い頃によく飲んでいたミロ。ココアのようでココアでない不思議な飲み物。パッケージで何故か少年がサッカーボールを蹴り上げている「強い子のミロ」、である。

 そのミロが数年前、貧血の解消に良いらしいと話題になり、一時は全国的に品切れにもなった。実際に効くかどうかは成分的に微妙なところらしいのだけれども、夜中に珈琲などを飲むよりは良かろうと、なんだかんだで続けている。

 しかしスタンダードなミロは子供向けのためか、なかなかに甘ったるい。そうした意見が多かったのか、「ミロ 大人の甘さ」という、砂糖の一部を食物繊維に置き換えた、甘さ控えめなものが発売されたので、私はそちらを愛飲している。のだが、そのままではなんとも味がぼんやりしている。

 レンジで温めたマグカップの牛乳に、ミロを少し濃いめに溶かし、最後にラム酒をひと匙。これを私は「大人のミロ」と呼んでいる。

 たまに作るお菓子のために、我が家には製菓用のダークラムとブランデーが常備してある。製菓用の酒は加熱しても風味が飛びにくい、というのが特徴で、こうした温かい飲み物に合わせるにもちょうど良いのだ。

 島根のコク深い牛乳に、ほんのりと香ばしさのあるココア風のミロ、そこにラム酒の甘い香りが合わされば、もう寝る準備は万端、という気分になる。


 貧血への効果はさておき、この組み合わせは気に入っている。ときどきはブランデーに変えたりもして。さて、今夜はどちらにしようか。

 

 

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