4月2日 牛肉トマト煮込み

 カレンダーをめくることから始めた一日。

 昨日、めくらなきゃなぁと思いつつバタバタと外出してそのままにしてしまっていた。私の生活力はこの程度のものである。

 今日もこの街は風がうるさい。山から、川から、湖から。窓を閉めていてもごうごうと風が鳴る。一年経っても慣れやしない。

 観たいと思った映画はまたこの街ではやらないことがわかってしまったし、おしまいだ。おしまいだよ。


 貧血。今日はもうどうにもならない。

 実のところ、昨日のチェリーロードからの帰宅途中に体調は急激に悪化していた。内臓が拗じられるような痛み、一歩あるくのも億劫な倦怠感、血の気が引いて気絶する手前の目眩。

 生々しい話で申し訳無いが、月のモノというやつである。


 女の体に悩んだことのない女など、いるのだろうか。

 こうなる度に私は思う。

 この手の症状は個人差が大きいとはいえ、子宮の内膜が剥がれ落ちて出血するのは皆同じである。病気でもないのに、生理現象なのに、どうしてこうもままならないのか。自分の心も体も、自分の手に負えなくなる。このストレスで余計に全てが嫌になる。こんなにうんざりしているのに、来なければ来ないでやきもきすることになる。

 あまりにも厄介である。


 こんな日はもう何もできないし、したくないのだけれども、元気な内に肉を仕込んでしまったので片付けねばなるまい。

 ハッシュドビーフにも使った「くまもとあか牛」、解凍したうちの半量は、ケチャップとソースと赤ワインの漬けタレに揉み込んでおいたのである。

 それを今日は、ニンニクと玉ねぎとマッシュルームと炒め、ホールトマト缶と赤ワインと合わせて煮るのだ。本当はそれすらしたくないが、それくらいならなんとか、という感じ。

 ハッシュドビーフと構成が似過ぎてやしないか、と思わないではないが、やりたくなったので仕方ない。

 よく崩して煮込んだホールトマトは適度な酸味を残し、牛肉やマッシュルームの旨味、玉ねぎの甘味と調和する。しっかりと下味のついた牛肉は煮込んでも程よい噛みごたえが残り、クドさもなくジューシー。全体に赤ワインがよく効いていて、コク深い風味にまとまっている。仕上げに振った黒胡椒の香りも良い。我ながらうまくいった。


 失った血をたっぷりの牛肉でどうにか補いたいところ。

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