#14 任されたんだよ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「此、
「いや、大抵の支部や分所じゃ此見せても、支部長にすら信じて貰えないんだけど?」
「「「だろうな(でしょうね)」」なんだよ」
「酷い!!」
「そんな訳で、こいつ、実際はSSランクなんて言う化けもんなんだよ。覚えといてくれ」
マイク職員が持ち直した後、大雑把な説明を宣うジャスパーに対しエイミが反論するも、三人から同時に追い打ちを掛けられて堪らずに叫ぶが、あっさりとスルーされる。
「いや、それにしたって、二十歳そこそこでSSランクって…」
「三百歳超えてんぞ。この見た目だけど。なんてったって、俺の師匠だし」
未だ信じ切れないまで、異論を唱えるマイク職員への追撃が続く。
「そう。Fクラスの駆け出しパーティーのくせにDクラス推奨の森に入り込んで死にかかってたのを拾ったんだよね。あんまりにも無謀なんで、ほっとけなくってしばらく面倒見てた記憶があるよ。
「微かに、かよ…」
出会った経緯を説明しつつも、印象は薄い。と、エイミに言われて落ち込むジャスパー支部長。微かにと言う割りには当時の状況が妙にハッキリしていると思うのだが?
その後、パーティー毎面倒を見る事になって、冒険者として生き残り、クラスアップしていくためのあれやこれやを叩き込みつつ、数年間、一緒に活動していたのだと、エイミの思い出話が続いた。
「俺が未だ十代の頃の話だな」
「何十年前? なんだよ」
「「半世紀位?」」
付け加えられたジャスパーの余分な一言に、ルーがツッコミを入れ、エイミとジャスパーが異口同音に答える。共に活動した数年間の成果なのか、息がぴったりだった。
「要するに、見た目に関わらず、お強い方だと思えば良いんですね? どの位の魔物まで対応出来るんですか?」
諦めた表情で、全てを飲み込む決心を付けたマイク職員が纏めに入った。あまりの脱線具合に、放置して置いたらいつまで経っても思い出話から離脱出来ないという危機感が働いたらしい。よくやった。進行役としては、非常に助かる。
「取り合えず、ギルドの図鑑に載ってる魔物なら全部一人で対応出来るよ?」
「……え……?」
「あの図鑑に掲載してる高レベルの魔物、ほとんどこいつが情報持って来たらしいんだよな」
「あっちこっちうろうろしたからねー」
半分思考を放棄した様なマイクから漏れた声に続いて、ジャスパーとエイミの暢気な思い出話が続く。ダメだった…。相変わらず、話が進んで行かない。困ったものである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後もロートル(片割れの見た目は二十代だが)二名の昔話が続いたので、一部割愛で。現在、既にもうじき日が暮れようと言った時刻。
「今現在で確認出来てるドラゴンは、金銀銅白黒赤碧黄緑の九種だし、全部討伐経験あるから平気だよ?」
と言う、人間離れなどと言うレベルでは無い事を宣うエイミの台詞で、ジャスパー支部長の依頼はエイミが受けることに為った。それでも心配をするマイク職員が、確認のために同行するというおまけ付きで。マイク本人は、Aクラスに上がれなかった自分が同行すれば、護衛対象と為ってしまい、足を引っ張るばかりで邪魔をしてしまうと固辞し続けたのだが、金や銀のドラゴンじゃ有るまいし、ちょっと後方へ離れていてくれれば、何も問題ないと言うエイミの台詞と、後学のためにも付いて行け。と言うジャスパーの命令で決定と相成った。マイク職員にとっては、とんだ災難である。
「其れじゃあ、明朝八時頃の出発。と、言う事で」
「判った。頼む」
「よろしくお願いします」
「任されたんだよ」
「いや、ルーには頼んでないが…?」
エイミの出発時刻宣言に、ジャスパーとマイクから同意の返事が返ってくる。次いでマイクの台詞に返したルーの台詞へとジャスパーから突っ込みが入った。
「あー。まあ、あたしのパートナーだしね。一緒に行くんだから、間違ってはいないでしょ?」
「いやいやいやいや。登録し立てのFクラスなんか連れて行ける依頼じゃ無いぞ?」
取り成そうとしたエイミの台詞に対しても、お前は何を言っている? と、ジャスパーから、厳しい突っ込みが入る。一般的に、何も間違ってはいないのだが…。
「まあ。マイクさんと一緒に居て貰えば問題ないでしょ?」
「…其れもそうか」
なんとか納得させる事に成功したエイミ。パーティー結成早々に単独行動とならずに済んだ様だ。…丸め込んだ、と言った方が正解な気がするが…。
そんなこんなで、支部長室を後にしたルーとエイミ。ギルドの建物から外に出た時には、空に星が輝く時刻であった。
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