第14話 舞踏会
ビリーとクレイ達は、カナクから派遣された電気技師として毎日勤勉に作業を行っていた。風力発電や水力発電の設置作業は、ドラ山の洞窟から離れた屋外で作業する事が多く、ノスロ族やオルゴ族も加わり、熱暑を避けて主に夕刻から朝方にかけての作業となった。風力発電や水力発電の設置が進み、空調スーツも製造できるようになると、ノスロ族やオルゴ族も空調スーツを着用して作業できるようになった。現在のノードはノスロ族7割、オルゴ族3割ぐらいの割合でノスロ族が多かったが、ノスロ族は少数派のオルゴ族に対して強圧的な態度をとる事もなく、諍いなどはなかった。
半年経ってやっとドーム再生と電源確保とが軌道に乗り、直径5mのドームが30、直径20mの農業用大型のドームが完成した。ノード政府は、カナクから派遣された電気技師たちを慰労する為、完成した大型ドームで歓迎会を開催した。空調の効いた大型のドームの中に若い男女百人以上が集まり舞踏会が開かれる。ノード政府の代表がカナクから派遣された電気技師たちへ感謝の言葉を伝える短いあいさつの後、男女がペアになってダンスが始まる。曲は「アマポーラ」、カナクから来たビリーやクレイ達も良く知っている曲だ。
【Amapola (English lyrics by Albert Gamse)】
Amapola my pretty little poppy
You're like the lovely flower so sweet and heavenly
Since I found you my heart is wrapped around you
And seeing you, it seems to beat a rhapsody
・・・
ビリーとクレイの前に、女性二人がやって来て「お相手できますか?」と聞いた。ビリーとクレイは美しい女性達を見て「無論、喜んで」と答え、手を取ってダンスの輪に入って行った。細身のビリーの相手は金髪の女性で、体格の良いクレイの相手は茶色の髪の女性だった。ビリーとクレイのダンスはぎこちなかったが、4人とも自然と笑みがこぼれ、楽しいダンスの時間が過ぎた。
ダンスが一段落すると、4人はテーブルに着き、珍しい砂糖黍ジュースを飲みながら自己紹介を始めた。
「私はビリー、そして弟のクレイです。お相手をしてくれてありがとう」
「私はサラ、こちらは友人のターヤです。お二人はノードの女性の間では大人気です。そして私は特にビリーの大ファン、ターヤはクレイの大ファンです」
「それはうれしい。西のドーム都市カナクでは二人とも全くモテずに、困っていました。あなた達は貴重なお二人です。よろしくお願いします」
サラが大きな身振りでこう言った。
「私達ノスロ族は、ノードに来る前までは、山の中で大変な暮らしをしていました。オルゴ族とは不幸な過去がありましたが、今はノードで友人として仲良く暮らしています」
ターヤも続けて言う。
「私はオルゴ族です。それは本当です。私たち二人を見てもお判りでしょう」
「それに今では、カナクからあなた達電気技師が来て、空調の効いたドームで生活ができるようになりました。夢のようです」
ビリーが満面の笑みで応える。
「我々も、こんな美しい女性とダンスが出来るのは、夢のようです」
クレイが「カナクの女性は、ばあさんぐらいの年齢の女性が多いから、あなた達を見ると光がさしているようにまぶしい!」
笑いが起こり、サラが、今度はあなた達の話をしてとビリーに促す。
「我々は4人兄弟、あと姉と妹がいる。」
「えーー、4人兄弟!そんなの珍しい!賑やかでいいでしょうね。お父様とお母様はどんな方?」
「父も電気技師で16歳の時、14歳の母と出会い一緒に住む事になったが手も握れず、20歳になってやっと結婚できたそうだ」
「なんでお父様は手を握らなかったの?」
「あなた達の様に美しすぎてまぶしかったからだと思うよ」
「そうなの?じゃあ私達は手を握ってダンスをしたし、結婚してもいいのかな?」
「それは正しい意見だ」
「父に勝ったな!」
みんなが笑いで盛り上がり、ビリーとサラ、クレイとターヤは再び手を取り合ってダンスに向かった。
この日からこの二組のカップルは毎日のように逢って次第に親交を深め、ある日、クレイがターヤにプロポーズして結婚を決め、翌日、ビリーもサラにプロポーズして結婚を決めた。サラは1日遅れのプロポーズに多少不満を言ったが、前向きな性格で、私が美しすぎてビリーが気おくれしたのだろうと許してくれた。
早速、出来上がったばかりの集会ドームで二組の結婚式が行われた。ノードの人達もカナクの人達もこの二組の結婚を心から祝った。ノードでは、結婚が奨励されており、結婚するカップルには特別金が支払われ、二カ月の休暇、新築ドームが提供されることになっている。ビリーとクレイは二カ月の休暇が取れる事になったが、カナクから来た電気技師という立場ではそうのんびりしても居れず、結婚式の二日後から仕事に戻る事になった。新築ドームの提供は、新居のドームも完成が遅れ、二組ともやっと入居できたのは1カ月後だった。
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