3/27(月)「コイン」

裏を出すんだ。

表が出たら僕の秘密を。

裏が出たら君の秘密を。

僕は裏が出たら君への片想いを忘れるって決めているんだ。だから、諦めるために、裏を出せ。もう何年も胸に溜まった想いを捨てるために、コインを投げる。

裏が出た。涙が滲む。これでいい。

「俺の秘密か?君が好きなんだけど」

「は?」


 【おまけ】

「いえよーーーー!!」

「ん?」

「じゃ、なくて、い……いつから」

「そうだな。12年ほど前からか?」

「僕より長いじゃないか!!」

「まぁ安心しろ。これはもう恋とか言うレベルではなく、愛に近い。君がいつ俺を結婚式の友人挨拶に呼んでも良いように27通りくらい準備をしていたし」

「ひっ」

「君の子どもの世話を任される準備は何年も前から……どうしたっ」

「ぐぅ……ふぅ……」

「何故、泣く。安心しろ、恋人の座は望まない。君みたいな良い奴が幼馴染みでいてくれる方が俺には奇跡だし、世界で一番魅力的な君がとても素敵な嫁さんを貰うことは決定事項みたいなもので」

「じゃなくて!!」

「気持ち、悪いか?」

「じゃなくて……ぐっコインの表が出たら、君に…君に……ずっと言えなかった想いを……ぐずっ」

「……え?」

僕は、コインを表に返して、ずっと心に溜まり続けた想いを吐き出す。


「君の、恋人にしてください」


無表情な彼は、珍しくきょとんとした顔をした後、慌てて頷いた。



ちなみに、賭けの内容は「一生相手に秘密にしておきたいこと」をコイントスで決めていました。

“僕”は、その想いに終止符を打つため、表が出たら、嫌悪される覚悟で告白する。

裏が出たら、長年心に溜まってきた彼への想いを絶ち切ると決めていました。

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