主人公にあこがれた私たちへ

春野蕾

第一章

「水野さん、だよね?何読んでるの?」

そう誰かに言われた気がして顔を上げると、目の前にいたのは学校一のイケメンで人気者の葉山紅葉だった。

「はっ、葉山くん…。あの、その、この本。」

私が見せた本は、私には一生縁のないような恋愛小説だった。

(絶対に今、こんな陰キャが恋愛小説読んでるって引かれた。)

「あっ、それ知ってる。おもしろいよな。」

「えっ、引かないの?」

予想外の反応が返ってきて、つい本音が出てしまった。

「引かないよ。だって何を読むかは個人の自由じゃん。」

ザ・イケメンの答えが返ってきた。

(やっぱり、イケメンの言う事は違うなぁ。)

そう思っていると、葉山くんは何かを決心するように深呼吸をして言った。

「俺さ、小説家になりたくて、一緒に小説のアイディア出してくれない?」

「えっ、私でいいの?」

「うん。本をたくさん読んでいて、いろんなことを知ってそうな水野さんと一緒の方が絶対に楽しそうだし。」


成績も通っている高校も身長も体重も、何もかも普通な私の毎日が普通じゃなくなった。

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